第13話 授賞式

有希が俺が絵を描かなくなってから絵を描いていた。

俺の例の幼馴染なのだが.....。

その描いた理由として俺が絵を描く事をやってほしいと願っている為に創作活動をやっていた。

俺の絵をもう一度見たい、と、だ。


俺は感動というよりかは。

本当に.....色々と複雑で涙が止まらなかった。

有希が俺の為に.....やってくれていた事に、だ。


そして有希に再会した事もあって、だ。

俺は目の前で絵で表彰され大賞を取って記念のトロフィーを受賞している有希を見てから柔和になる。

そして.....こちらに手を振って笑みを浮かべた。


「.....良かったですね。.....嬉しそうです」


「何よりも.....嬉しかった。有希が俺の為に動いてくれたのも、だ」


「.....やっぱり今でも幼馴染さんが好きですか」


「.....ああ。俺は.....やっぱり好きかも知れない。でももう恋はしないと決めたからな。.....でもそれでいても少し軽くなった」


「.....そうなんですね」


単純に恋をする。

その事は誰かを傷付ける事になる。

だから俺は恋をする事は無い。


でも.....少しだけでも変わり始めた。

幼馴染に再会して、だ。

思いながら俺は.....幼馴染が壇上から降りて来るのをみていた。

そして車椅子を激しく動かしながら直ぐに俺に寄って来る。


「見ていてくれた?道春。初めての賞だよ」


「.....ああ。絵も綺麗だったし.....お前が取って嬉しかった」


「.....有難う。道春」


「良かったですね。小林さん」


「有難う。愛花さん」


そして俺達に笑顔を見せる有希。

すると.....奥の方から、有希!、と呼ぶ声がした。

慌ててやって来るその人物。

それから俺達を見て驚く。


君はもしや、と、だ。

髪に白と黒が入り混じった中年ぐらいの丸眼鏡のおじさん。

スーツ姿だが。

この人.....有希の親父さんじゃないか?もしや。

俺達を見て嬉しそうにする。


「.....君が居たんだな。それで有希は何だか元気なんだ」


「.....はい。ご無沙汰しています。.....孝弘さん」


「.....何だか噂によると絵を描かなくなったっていうのは本当かい?この頃、小耳に挟んだんだが」


「.....有希が交通事故に遭ってからはもう描かないつもりでした」


ですが.....、と俺は有希を見る。

有希は俺を見ながら少し悲しげな顔をする。

俺はその顔に笑みを浮かべた。

そして顔を上げる。


「有希が言ったんです。私は生きている。だから描いてほしいって。だから.....描いてみようかなって思います」


「.....道春.....!」


「そうなんだな。道春君。うむ。君と有希が.....将来結婚してくれたら天才の孫が生まれる可能性があるな!アッハッハ!」


俺達はビキッと固まった。

愛花がピクピクと眉を動かす。

俺はその姿に苦笑いを浮かべながら.....有希を見る。

有希は、そ。それは.....、と火照っていた。

その光景を見ながら孝弘さんが愛花を見て首を傾げる。


「そういえば.....すまない。君は.....?」


「あ、私は友崎愛花と申します。お父様」


「.....お父様!?!?おい!愛花!?」


「私にとってはお父様です。アハハ」


笑顔の愛花。

舌を出して、てへぺろ的な感じを見せる。

俺は盛大に溜息を吐いて驚いている孝弘さんを見る。

孝弘さんは、面白い子だね、と笑みを浮かべた。


「お父様と言われるとは思わなかったが.....それは一応に置いておこう。もしや君も美術部で道春君と同じ学校かな」


「はい。そうですよ」


「.....ではそんな君にもお願いがある」


「.....はい?」


「.....有希が其方の学校に転学するつもりで居る。どうやら君達の学校はバリアフリーも豊かな学校らしいからな。もし良かったら有希と友達などの関係になってほしい。有希は友達が少ない関係もあってな」


見開く愛花。

俺も驚愕しながら孝弘さんを見る。

そんな愛花は顎に手を添えてから優しい笑顔になる。

それから頷いた。


「全然大丈夫です。私.....小林さんとお友達になります」


「.....有難う。.....やはり君の周りはやはり良い子ばかりだな。道春君」


「.....そうですね。俺の周りはみんな良い奴らばっかですよ。本当に。だから俺は支えられています」


「.....そうか。.....有希。お前も良かったな」


「はい。.....宜しくお願いします。愛花さん」


その事に愛花は、宜しくです。もし良かったら私も有希さんって呼んで良いですか?、と笑顔になる。

俺はその姿を見ながら.....少しずつだが。

歯車が動き出した.....そんな感じを感じた。

俺は少しだけ笑みを浮かべる。


「ところで道春君」


「.....何ですか?」


「君はどちらの子か好きになったかね」


「ぶはっ!」


愛花の目付きが変わる。

何をいきなり聞いてくるのだ。

俺は器官に入った唾で咳をする。


それから孝弘さんを驚愕の眼差しで見る。

孝弘さんは笑みを浮かべて、冗談だ、と答えた。

俺は、ですよね、と心で安心する。


「.....君は今は決めれないですよ。孝弘さん」


「.....だろうと思うからね。アッハッハ」


「いやいや、冗談でもきついですよ.....」


「すまない。悪かった。.....ではお詫びも兼ねて、有希。そして愛花さん。道春君。私の行きつけの喫茶店があるのだが.....行かないかね」


孝弘さんはニコッとする。

俺達はその言葉に顔を見合わせる。

それから、行きます、とゆっくり返答をする。


愛花もニコッと笑みを浮かべ。

有希も笑顔だった。

俺はその姿を見ながら.....忙しくなりそうだな、と考えた。

世界が.....目まぐるしく動き出そうとしている。

その事に、だ。

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