第3話 私は強くなりたい
俺は高校2年になった姫野が来てくれて嬉しく思える。
見捨てられている訳じゃ無いと思えた。
だけど.....あくまで姫野以外は俺を捨てた様なもんだ。
まあ今から恨みつらみを語っても仕方が無い。
考えながら俺は授業が終わってから姫野の事を思いつつ立ち上がる。
そして.....さっさとこの場を後にしたいと思い出ようとする。
するとバタバタと背後から足音がしてきた。
俺は?を浮かべて.....背後を見る。
笑顔の栗葉が手を振りながら来ていた。
「道春!」
「.....どうした?お前.....友人と一緒に帰るんじゃ.....っていうか部活とかはやって無いのか」
「やって無いよ。.....だから一緒に帰りたい」
「いや、一緒に帰りたいって.....良いのか」
「何が?私の事?それとも私のお友達の事?」
「どっちもに決まっているだろ。お前の事は.....大切なんだから」
またそんな事.....、とトマトが熟す様に真っ赤になる栗葉。
俺は反応を見ながら、まあいいや.....付いて来るなら付いて来たらいい、と踵を返してそのまま歩き出す。
うん、と栗葉は頷きながら横にチョコンとやって来る。
そして歩き出した。
「.....でも高安さん.....その、親父さんとか大丈夫なのか。お前の」
「え?どういう意味?」
「接触しても良いのか、と聞いている。俺と」
「.....何を言っているの?道春。私達は関係ないでしょ」
「.....そうなのかな」
絶対にそうだから。
私達には関係無いから、と俺を見てくる栗葉。
俺はその言葉に.....少しだけ複雑な顔をする。
そして、そうか、と答えた。
栗葉は頷く。
「道春。.....悩みすぎ」
「.....心の何処かで引っ掛かっているんだろうな。多分」
「私は.....悩むのは良いと思う。でも悩みすぎ。お願い。体調が壊れたら.....私、泣くから」
「.....止めてくれ。お前が泣くと.....あの時を思い出すし.....」
栗葉。お前は笑顔が一番だから、と俺は呟く。
そして下駄箱から靴を出していると。
下駄箱が違うが近くにある2年の下駄箱付近から出て来た奴ら。
つまり俺のクラスメイトだった奴らが俺を見て、見ろよアイツ.....、とかクスクスと言いながら馬鹿にしている。
また面倒な.....と思っていると栗葉がいきなり怒った。
「何!?何か文句あるの!?」
「オイ.....栗葉。良いって。俺は.....」
栗葉はかなり怒っている。
俺のこの言葉は聞こえず栗葉の言葉だけが聞こえた様だ。
その2年がこっちに迫って来た。
そして青筋を立てる。
「何だよ。山本ソイツ。.....つーか何時からお前みたいなのが彼女持ちになったんだよ。生意気だぞお前」
「.....俺の彼女じゃない。.....だがお前の様な奴に栗葉に文句を言う権利は無い」
「どうこう言おうが所詮は留年野郎だろお前」
「.....」
俺は額に手を添える。
周りに人が集まって来る。
俺はそれを見てから、.....行こう、と栗葉の肩を掴んだ。
そしてそのまま杉野を睨んで去って行く。
1年坊を格下に見る様な馬鹿野郎とは話したくない。
特に.....栗葉を馬鹿にするなら絶対に許さん。
もし弄るぐらいに酷くなったら土下座させてでも謝らせる。
「お、お兄ちゃん.....」
「.....あんな馬鹿に突っかかるな。お前は可愛くてそして愛らしい。お前の全てが壊れちまう」
「.....おにい.....」
「.....お前、また俺をお兄ちゃんって呼んでるぞ。ハハハ」
今はそんな事を気にしている場合じゃ.....、と栗葉は悔しがる。
俺はその様子に眉を顰めて、栗葉、と強く言う。
それからビクッとする栗葉を見つめる。
そして額を弾いた。
「いや.....痛いよ道春.....」
「.....頭冷やせ。俺の為に.....有り難いけど」
俺は栗葉を.....見つめる。
栗葉は俺を見ながら.....俯いた。
そして小さく頷く。
頭の横の三つ編みを揺らしながら、だ。
「.....うん.....」
「.....それで良い。お前は栗葉。俺の義妹だった栗葉なんだ。心を強く持って.....怒りに任せるなよ。あんな奴らに」
「.....道春.....何でそんなに優しいの」
「.....お前と一緒に居たから優しくなったんだよ。.....あのな。俺だって嫌だったんだぞ。お前と離れ離れになる事が」
「.....道春.....」
赤くなって.....そして泣きそうな顔になる栗葉。
それから.....俺に赤子の様に縋って来た。
私は.....道春から離れる事が嫌で嫌で仕方が無かったよ。
道春が.....心配だったから.....心配だったから!、と。
号泣して泣きじゃくる。
「.....お前.....」
「私は.....道春が.....大切だから。お兄ちゃんとしても1人の男の子としても.....!」
「.....そんなに.....」
「当たり前だよね?だって私は.....お兄ちゃんの妹だったんだから!あの日から考えていた.....妹になって良かったって.....」
「.....そうか。.....栗葉.....有難うな」
そう呟きながら栗葉を見る。
栗葉は丁度、歩いている河川敷の風景をジッと見ながら意を決した様にした。
俺は?を浮かべて見つめる。
すると栗葉は俺に向く。
そして唇を噛んでから顔を上げた。
「私、道春を守れるぐらい強くなる」
「.....!」
「私はお姉ちゃんでも.....姫野さんにも負けないぐらい強くなる。だから.....道春は私を守ってね。また兄妹の様に一心同体になろうよ」
「.....分かった。お前を必ず守るよ。栗葉」
栗葉は見開く。
そして.....俺に赤くなりながら?それとも夕日のせいか?
赤い顔で柔和になる。
俺はその姿に.....また強くなろうと。
その様に.....思えてきた。
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