第9巻 マンガ喫茶のステータス?
とりあえず外装は出来上がり、シオリが頼んでくれた家具達が到着すれば、内装も大体出来上がってくる予定。僕とシオリは喫茶店内でお昼休憩を取ることにした。
「サンドイッチ作ってきたの。一緒に食べよ!」
「おお……これは。メチャメチャ豪華じゃん」
バスケットの中に入っているサンドイッチ達は見るからに豪華で、食べる前から上品な味が約束されているような気がする。果物入りサンドイッチをパクパク食べながら、僕は次の構想を練っていた。
お客さんを招くスペースは出来上がりつつあって、トイレも店員専用ルームも、厨房も配置してある。あとはやっぱり、名前のとおりマンガを充実させないといけないだろう。
「部屋も大体出来上がってきたかも。あとはマンガを沢山召喚しなくちゃいけないな」
「そうね! でも、この部屋に本ってどのくらい必要なの?」
「とりあえず、あと三百冊くらいでいいんじゃないかと思ってるんだよね」
冒険者として色々な文化や土地に触れてきた僕ではあるが、マンガもマンガ喫茶も未知な存在だった為、一体どのくらいが必要かがはっきり掴めない。
でも、とりあえずこの店の本棚が埋まるくらい召喚しておけば問題ないんじゃないかな、なんてざっくりした計画だった。もうちょっとしっかり考えないとエライことになりそうだ。
お店をやっていくって過酷で大変だというのは、親父を見ていればなんとなく解る。商人として今も精力的に動き回っている親父は、自身もお店を開店させたが、全く売れずに閉店するという失敗を繰り返していた。
僕としては失敗したくない一心だけど、こればっかりはやってみないと分からない。そんなことを考えつつコマンドウインドウを確認していると、なんだか変な表示が出ていることに気づく。
あれ? なんだこれ?
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マンガ喫茶 Lv5(+4)
名前:ブルーバード
所持設備Lv2
店員:2名
攻撃:382
防御:291
移動速度:140
サービス力:50
魔法数:20
売り上げの詳細は【コチラ】
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「うわ!? なんかマンガ喫茶にステータスがあるんだけど!?」
「え!? そうなんだ。私も見てみたい!」
シオリは僕と違って店のステータスが見れない分、興味津々だ。僕はとにかく紙に書いて見せることにした。
「マンガ喫茶なのに、攻撃とか防御とかでてるのはなんでだろ? しかもLvが5が上がってるらしい!」
「わあー! リーベルにはこういう画面が見えているのね。何かとっても面白そう」
謎は深まるばかり。考えてみても仕方ないので、サンドイッチを食べ終えた僕は作業を続けてみることにする。次はマンガを召喚しよう……っと?
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マンガ召喚
単発召喚 1回100P
十連召喚 1回800P
百連召喚 1回5000P
マンガポイント所持数:52140
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なんかポイントがめちゃくちゃ増えてる! 後でヘルプなどで確認して分かったんだが、どうやら建物を作ったり色々しているだけでポイントが貰えていたらしい。これならガチャし放題じゃないか。
「シオリ。ちょっとビックリさせるかもしれないけど、今からマンガ召喚を一千回しようと思う」
「ふぇ!? い、一千回って? そんなにできたの?」
「うん。唐突だができるようになってた!」
立ち上がり召喚を開始する僕を、シオリはポカーンとした顔で見上げていた。
はい、というわけで召喚!
大抵魔法っていうのは何度も使用すると見慣れてしまうものだけれど、どうもマンガ召喚は慣れないというか、どんどん演出が派手になっている感じがする。
金枠の魔法陣が現れて雷が巻き起こり、何度も何度も室内を行ったり来たりしてる。これ絶対開店中はできないね。
でも百連を十回するのはけっこう大変で時間がかかるんだよなぁ。なんて考えていると、召喚の画面右上に気になる文字が浮かんでいることに気がついた。
「スキップ? なんだろあれ」
僕が言った瞬間、百連ガチャがさくっと終了してしまう。多分言葉にしてから一秒も経ってない。
「え!? え、な、なんで?」
シオリが目を丸くしてる。うん、僕もビックリだ。
「多分省略できるみたいだ! 便利だよこれ!」
こんなシステムまでついてるのはかなりいいかもしれない。僕はどんどん百連ガチャを実行してその度にスキップし、あっという間に千冊のマンガをゲットすることができた。とはいえ本棚のほうが足りなくなっているから、できる限り早く買い揃える必要がありそうだ。
『マンガ喫茶のLvが上がりました。獲得できるアイテム数がアップしています』
と、言ってる側からまたあのお姉さんボイスが耳に入ってきた。コマンドで本棚や椅子などを確認すると、
■カウンター あと1
■本棚 あと20
■テーブル あと30
■椅子 あと50
めちゃめちゃ追加されちゃってる! これもうシオリが頼んでいたテーブルとかいらなくないか!
「もう一千冊増えちゃったの? 信じられないくらい早いね!」
「だね! これなら何冊でも増やせそうだけど、スペースがないからやめておこうか。しかし、今回のマンガも面白そうなのがいっぱいあるよ」
僕は本棚いっぱいに詰まったマンガをいくつかパラパラとめくってみる。面白そうな本で溢れているが、一つどのマンガにも共通点があることに気がついた。
それはマンガの巻末に、【+攻撃○%】とか、【+魔坊○%】とか変な表記がついてること。よくよく巻末だけをみてみると、どのマンガにも記載がある。何これ?
「ねえねえリーベル。もしかして、そろそろ開店出来ちゃいそうな感じ?」
「ん? ああ、そうだな。でも、店員さんを募集しないと」
そう。今のところ店長である僕と店員のシオリの二名しかスタッフがいない状況である。このままではどう考えても人数不足になってしまうに違いない。それに営業時間のことも考えなくちゃいけない……うーん。悩むことが多い。
実はさっきコマンドの中にあった【店員募集】っていうのをやってみたんだけど、歯車が回るような演出が続くだけで何も変わることはなかった。もしかして今は使えないのかな?
「そっか。店員さんを募集するにはどうしたらいいのかな? 立札とか、町でお声がけとかする? あ……このマンガ……きゃあっ!?」
「え! どうした?」
いろんなことに頭を悩ませていると、突然一つのマンガを手にしたシオリが驚きのあまり悲鳴を上げたようだ。床に落としてしまったらしいマンガを手に取ったが、一見すると普通に見えたんだよね。
ただ妙だな……【十八歳以上禁止】って帯に書いてある。
なんだろう。しかもこの表紙、ちょっとばかり大人っぽい空気感があるというか、セクシーというか。
「お、おお! これは!」
数ページをめくったところで僕は理解してしまった。マンガの世界にもあるのだ。こういう男子をワクワクさせてくれる素晴らしい書物が。
僕は内心感動してしまったが、珍しく隣から冷たい圧を感じる。
「やだ! リーベルったら夢中になって読んでるでしょ!」
「え? いや、そんなことないよ。全然夢中になってない。全然」
「手が止まらないじゃない。もー。やめてよねっ」
どういうわけかシオリを怒らせてしまった。彼女の白い肌が真っ赤になっちゃってる。よく分からないけど、僕は引き続きマンガ喫茶の開店準備を進めるのだった。
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