第54話 傭兵団は相変わらず
それから一週間後。バーガング傭兵団を壊滅寸前まで追い詰めたことで国家公認傭兵団となった我がスカイアーク傭兵団には、数多くの入団希望者が訪れた。が、
「ち、血塗れのスマイリーデニーズがいるとこなんて聞いてない! 退団する!」
「サキュバスがいるなんて聞いてないぞ! 精気を吸われたらたまらん!」
「あたしマザコン嫌いだから入団はパスで」
来る入団希望者、皆がこのような理由ですぐにやめるか入団を断ってくる。結局、入団希望で来た傭兵は誰も残らず、傭兵団は俺を含めた四人だけのままであった。
そして今日は国からの依頼で凶悪な海賊団を退治するため、船に乗って大海原へとやって来ている。無事に達成すれば傭兵団の名が上がる。名が上がればまた入団希望者も来るだろう。俺は気合を入れて海賊退治に臨んだ。
やがて海に浮かぶ海賊船を遠眼鏡で発見する。こちらの存在に気付いている様子はない。ならば夜を待ち、夜襲を仕掛けようと俺は考えたが……。
「海賊船発見! ようしわたしが全員、ぶっ殺してくるよ! うひゃひゃひゃ!」
「えっ? ちょ、待っ……」
俺が止めようとするも、デニーズは海に飛び込んで海賊船へ泳いで行ってしまう。
「今回もデニーズ殿だけで仕事は終わりでござるかなぁ」
「なに言ってるんだ! ひとりで行かせるわけにはいかない! 俺たちも行かないと!」
「いや拙者、泳げないでござるし……」
「しょうがないな……。じゃあゼリアと俺で行って来るよ」
「わし、濡れるの嫌じゃ。股を濡らすのは好きじゃがの」
いやらしい笑みを浮かべてゼリアが身を寄せてくる。
まったくこいつはこんなことばかり考えている。淫魔だからしかたないけど。
「そんなこと言ってる状況か! もういい! 俺だけでデニーズを追う!」
絡み付いてくるゼリアを身体から離し、俺は海へと飛び込む。
しかし追いかけようとするもデニーズはすでに遠くまで泳ぎ進んでおり、とても追いつけそうになかった。
なんて速さで泳ぐんだあの女。魚かよ。
とにかく俺も海賊船へ向かって泳ごうとしたとき……。
「ふははははは!」
聞き覚えのある笑い声が聞こえてくる。見ると、一隻の小さな船を漕いで誰かがこちらに向かってやってきていた。
「こんなところで会うとは奇遇だなガスト!」
「じょ、丞山!」
それは丞山であった。
近づいて来た小船に俺は掴まり、這い上がる。
「どうしてここに?」
「言っただろう。偶然さ」
「本当は?」
「女にフラれてお前らを追って来た」
「あそ」
背中を丸めてずーんと落ち込む丞山の背を俺はポンと叩いた。
「おっとこうしている場合じゃない。デニーズを追わなくちゃ」
船のオールを手に持って漕ごうとする。と、
「うおあ!」
ゼリアが上から降ってきて俺に抱きついた。
「やっぱわしも行く」
「わかったからそんなくっつくなって!」
「精気が足りん。ここで補充をするのじゃ」
頬をぺろぺろ舐められる。
「そんなことしてる場合か!」
「サキュバスは常にエッチが第一じゃ。さ、服を脱げ。最高の快楽を与えてやるぞ」
「よし」
丞山が服を脱ぐ。
「お前さんじゃない」
海に突き落とされる。
「さあガスト、服を脱ぐのじゃーっ!」
「いやぁ! やめてーっ!」
俺の服を脱がしにかかるゼリア。そこへ金髪の女が跳び蹴りを放つ。
「痛い! なにをするんじゃ!」
「この売女め! 海賊の前にお前を退治してやるーっ!」
いつの間にか戻ってきたデニーズがゼリアと殴り合って暴れ始める。激しく暴れるものだから当然、船は揺れて俺は海へと落っこちた。
「大丈夫でござるかー?」
ステイキの呼びかけに俺は弱々しく手を振る。
もう嫌この傭兵団。
俺は海面に顔をつけ、今後を憂うのだった。
最強の傭兵団に入団を拒否られたので自分で傭兵団を作ったら殺人狂の超絶美人とか変な奴ばかり入団してきて手に負えない 渡 歩駆 @schezo9987
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