第29話 勝負の果てに
………………二時間後。
「は、はひー……」
そこにいたのは腰がガクガクになってうつ伏せるサキュバスの姿だった。なぜだか大人から子供の姿に変わっており、豊満だった肉体が小柄な幼女になっている。
俺は全裸で仁王立ち、腕を組んでその情けない幼女淫魔を見下ろしていた。
「な、なんじゃ貴様……。そ、底なしか……はひー」
あんまり人に言うことではないが、俺はいくらでも精を放出できる体質で、つまり絶倫なのだ。理由はわからないが、いつの間にかそういう身体になっていた。
「う、うう……き、貴様の中になにか別の生き物の気配を感じたぞ。これは確か……」
それを聞いて俺は眉をピクリと動かす。心当たりがあった。
「それよりも約束どおり逃がしてくれるんだろうな」
「う、うむ。好きにせい。じゃがわしも連れて行け」
「いや、なんでだよ?」
「エッチが好きだからじゃ」
正直者である。
「他の男はすぐに果ててしまって長くエッチを楽しめん。その点、そなたならば絶倫じゃからわしが満足するまで楽しめるからの。側にいたいのじゃ」
「男が果てるのはお前が精気を奪うからだろ」
「サキュバスの習性じゃからそれはしょうがない。というか、精気はそんなにいらんのじゃ。一週間に一回くらいエッチをすればそれで十分じゃしの」
「被害者はずいぶんいたようだが?」
「わし、一日に三回はエッチしないと落ち着かないんじゃよ。エッチ大好きじゃから」
ただのセックス依存症である。
このサキュバスは生きるために精気を吸い取っていたのではなく、ただエッチがしたかっただけのようだ。
「そなたの絶倫があればわしの性生活は充足に満たされる。ここで男漁りするのも飽きたしの。そなたの愛人になってやるのじゃ」
「結構だよ。そんなの」
「しかしそなたらはわしを退治に来たのじゃろう? わしを置いていけばまた精気をしぼられる被害者が出るぞ。それでもいいのかの?」
「いや、良くはないけど……うーん、でも傭兵を殺したお前は犯罪者だしなぁ。俺たちと一緒に行動させるわけには……」
「わしは少なくともこの国の人間は殺しとらん。確かにここへ来た男たち全員とエッチをしたが、奴らは仲間同士で勝手に殺しあったのじゃ。わしを独占したくての。最後に残った奴も出血多量で死におった。むしろそいつらを埋葬してやったわしは親切じゃぞ」
そういえばここに来るまで死体を見なかった。埋葬したのが本当ならば、ずいぶんと律儀なサキュバスである。
「とは言え、死んだのはわしにも責任がある。反省している。これでよかろう」
「あーう、うーん……まあいいか」
ここに残して被害者を増やさせるわけにもいかない。倒せない以上、連れ帰る以外にどうしようもなかった。
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