第47話、其のメイド……

俺が目覚めたのは天井の白い部屋だった。


「兄貴、目が覚めたんだ……

って、い、いつの間に着替えたんだよ」


あれは夢ではなかった。俺はメイド服に女性用の下着で寝ていたのだ。


幸い、弟に見られただけで、病院着に着替えることができた。



「うん?ここは……」


「病院だよ。

ちょっと寝ててくれ、今看護師さんを呼ぶから……」


それからが大変だった。

看護師さんやドクターが来て色々と検査された。


どうやら、俺は屋上から転落し、奇跡的に無傷だったものの一年間目を覚まさなかったらしい。


建物の不備であったため、業務中の事故扱いとなり、労災で処理されていた。

会社は療養休暇で、寝ている間も給料が振り込まれていたのだった。


そのまま、一週間検査入院して俺はアパートに帰った。

部屋は、弟が時々掃除がてら空気を入れ替えてくれていた。


アパートの一階部分は俺が寝ていた間に、コンビニに変わっていた。



弟が帰って、ベッドで横になっていたら頭の中で声がした。


『マルコ、聞こえるかしら』


「あっ、サクヤ様ですね」


『状況は理解できたと思うけど、ツクヨミ様が時間軸を操作してあなたは一年間寝ていたことにしてあるわ』


「浦島太郎にならなくてよかったですよ」


『ここのアパートはあなたの名義にしてありますから、会社も辞めていいですよ。

コンビニを用意しましたから、生活には困らないでしょう。

私たちからのご褒美も用意してありますから、コンビニに行って確認してくださいね』


「アパート経営なんて、老後が明るくなってきました」


『うふふ。大丈夫です。一生安泰でくらせますからね。

では、ごきげんよう』


「ありがとうこざいました」


コーヒーでも買ってくるかと一階に降りていく。




「いらっしゃいませ」


「あれっ?」


「どうなさいました?」


「深雪さん?」


「はい、吉川深雪ですけど……」


「俺だよって……マルコだった……」


「えっ、マルコさんって……大家さんで、大ちゃんのお父さんのマルコさん」


状況がかみ合わなかったけど、確かに深雪さんだった。

このアパートには、魔法剣士の奏君と魔法使いの長介さん、補助魔法使いの沙織ちゃんと亜理紗さんも住んでいる。


「ちゃんなのか!」


大五郎もいた。

大君と一樹君はそれぞれの神様が別の世界に連れて行ったらしい。


結婚もしていないのに、戸籍上子持ちになってしまった。


俺は、会社を辞めた。

このコンビニには、神様由来の商品ばかりで、仕入れなしで商品が追加されてくる。


一番人気は恋愛成就ハイチョウで、意中の人に食べさせると好感度があがるご利益がある。

バリバリ君アイス・ユンケル味も人気で、これを食べるだけでバキバキの体になるらしい。


数年後、俺は深雪さんと結婚して、大五郎も一緒に暮らしている。

まあ、幸せな人生かな




ここまでお読みいただきありがとうございました。

本話をもって完結とさせていただきます。


P.S.サクヤ様、毎回のコメントありがとうございました。

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メイドな俺とビビリーな勇者と… モモん @momongakorokoro3

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