第44話、其のメイド……ビビる

「出たぞ、地竜だ!」


「あっ……」


大江戸の地竜はティラノサウルスそのものでした。


ドスドスドスッ


ティラノサウルスがこちらめがけて走ってきます。


「何をしている!強化と障壁を!」


ダメです。足がすくんで動けません。

子供たちも同様でした。


ティラノサウルスが目前まで迫ったところで、大神さんと大和先生が飛び出して行きます。


『し、身体強化!』


『物理障壁!』


補助役がやっと機能しだします。


先生たちがティラノサウルスの首を切り落とします。


「あっ……」


「どうした。こんなのに怯んでいたら、魔王城になんか入ることもできないぞ」


「む、無理です……こんなの」


一旦町田に戻ります。


「どうしたというのだ」


「あ、あんなに大きいとは……」


「あんなに恐ろしいとは……思いませんでした……」


「これまでの、修行ならば倒せない相手ではないぞ」


「いえ、お二人の目線では、少し大きいだけかもしれませんが、子供たちの目線からしたら……巨大すぎます」


一度怯んでしまった心は、簡単には奮い立ちませんでした。


その日は、大和へ帰ります。


「どうだ、過信など吹っ飛んだであろう」


「「「……」」」


「大江戸は、あんなのばかりなんですか」


「あれがウヨウヨいるのは間違いないさ」


翌日から稽古が再開されます。


「どうしたらあれに立ち向かえるか考えるんだ」


「……」


「返事はどうした」


「……はい」 「「「はい!」」」


稽古を繰り返しては、町田へ行き地竜に対峙します。

どうにか地竜を子供たちだけで倒せるようになったのは、大五郎が13歳になった秋でした。


ある日、大神さんが男女の若者を連れてきました。


「あっ、サクヤ様……」


直感でわかりました。


「マルコ、よく頑張りましたね」


「いえ、まだまだです」


「お前に、大地の刻印を授けます」


サクヤ様はそういって私の胸に触れます。

すると今までの刻印が消えて、胸の真ん中に真っ赤な刻印が現れました。


「大地の刻印は、すべてを網羅します。

この力を使って、大五郎を魔王の元に導くのです」


「はい」


「僕からも刻印を授けよう」


「あなた様は……」


「ツクヨミと言います」


「ツ、ツクヨミ様であられましたか」


「僕からは時の刻印を授けましょう」


大地の刻印の真ん中に白い点が刻まれます。


「時の刻印は、10秒間マルコ以外の時を止めます。

ただ、一度使うと24時間は使えませんから、注意してください」


「あ、ありがとうございます」


こうして、すべての刻印を授かった私は、決戦に備えます。

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