第41話、其のメイド……総菜パンを発明する

「次は酵母を取り出して柔らかいパンを作るわよ」


「酵母って何ですか?」


「えっとね。食べ物を放置しておくと腐るわよね」


「はい」


「でもね、腐らせないで、おいしくしてくれる菌もあるの。

例えば、味噌・醤油・干物ね。

ワインもそうなんだけど、それを小麦粉に混ぜると、フカフカの状態にしてくれるのよ。

フカフカに」なったものを焼けば、柔らかいパンになるの」


「信じられません」


「今回は、簡単にミカンの酵母を作りましょう……

作るといっても、元からミカンについているのを増やすイメージね」


「楽しみです」


「まずは、ガラス瓶と水をクリーンで除菌してと、ミカンを櫛切りで八等分して砂糖を入れるの。

そしてこれをよく振ってと、これで準備完了。

酵母菌が皮の間から出てきて、糖分をアルコールに変えてくれるのよ」


「もしかして、お酒もできるんですか!」


「出来るけど、今回はパンにするから飲めません」


「パンよりもお酒のほうが嬉しいかも……」


「残念でした。

あとは一週間、毎日蓋をあけて、糖が分解する時に発生する炭酸ガスを抜いてやります。

この時点で、お酒になってるんですね。

だいたい28度くらいのところが発酵に適してるんですよ。

別につきっきりになる必要もないのですが、酸っぱいにおいがしたら失敗です。

雑菌が入ってしまったので処分してください」


酵母づくりをしながら、昼間は簡易鎧のフィッティングを行います。


「はーい、一週間で泡がでなくなりました。

これが酵母液で、ワインでもあります。

これを100ccほど小麦粉に混ぜてこねます。

水分が足りないので、水を加えてしっかり捏ねたら30分休ませます」


捏ねるのは、深雪さんにお任せです。


「ふむ、いい感じですね。

塩を混ぜて更にしっかり捏ね、冷蔵で半日寝かせ、そのあとで3時間ほど常温で発酵させます」


「うん、2倍まで膨らみましたね。

そしたら、打ち粉した台に乗せて、伸ばして畳みます。

これを3回ほど繰り返して形を整えて1時間放置。

出来上がったものをオーブンで焼くだけです。

簡単でしょ」


出来上がったのはふっくらしたパンです。


「うまいよ、母ちゃん!」 「美味しいです」

「こ、こんなパンがあったなんて……」


「このパンでマヨタマパンとハンバーガーを作りましょうね」


こうして、丸子屋に新商品の総菜パンが誕生しました。

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