第40話、其のメイド……納豆に挑戦する

シャガミ川沿いに19kmほど上っていく。

鳥の魔物オオミサゴなどは比較的弱い魔物なのですが、翼長2mにもなる大きさで、慣れない上空からの攻撃がやっかいです。

私たちの上にピタリとハンギングで停まり、スキを見せると急降下で襲ってくるんです。

ハンギングとは、凧のように向かい風を利用して空中に停止する技なので、オオミサゴが出た時はずっと上を警戒する必要があります。


「また、ミサゴよ」


「どうしますか。

上ばかり見てると転んじゃいますし」


「そうだわ、スリングショットがあるじゃない。

大五郎、試してみて」


「わかった」


バシュッ


「やったわね。

オオミサゴはこれで退治できるわ」



「次はオオトカゲね。

こいつの皮膚は固くてスリングショットも効かないから、私が影分身で気を引くからみんなで集中攻撃よ」


「わかった」 「「わかりました」」


私も、目に攻撃したのですが、目をつぶすと逆に大暴れするので危険です。


複数で現れると大変です。

尻尾の一撃も協力でしかも顎の力も強いので、一撃くらっただけでも致命傷になってしまいます。



灰色オオカミは一頭ずつなら問題ありませんが、オオカミは基本的に群れで攻撃してきます。

ここは、超高速移動で速攻勝負です。


かなり手を焼きましたが、それでも大きな坂を二回上り相模の町に到着しました。


いつものように冒険者組合にいって、獲物の買取をお願いします。

オオミサゴの風切り羽とオオトカゲの皮が思いのほか高額です。

ここでも、簡易鎧の注文があり、武器のリクエストも……


今回は川を登ってくる途中で素材を大量に収集してきたため、調達に出る必要はありません。

これは、翌日から対応することにして、丸子屋さんに向かいます。

こちらでは、自前のタコ焼き器を作っていました。


「何か必要なものはないですか」


「心配いりませんよ。

売れ行きも好調で、儲けさせてもらってますよ」


「少し時間がありますから、今回は酵母を作って、やわらかいパンを焼きましょうね」


「酵母ってのはなんですか?」


「目に見えない細菌なんですけど、これがパンを柔らかくしてくれるのよ。

そうだ、納豆も作りましょう」


納豆は、茹でた大豆を藁で包むだけです。


藁の束を蒸し器で消毒してゆでた大豆を包みます。

30度くらいのところで一日おけば完成です。

ですから、湯たんぽの周りに藁で包んだ納豆をおいておきます。

藁を蒸すのは、納豆菌以外の雑菌を殺すためで、納豆菌は100度でも簡単には死にません。


翌日の晩御飯にいただきます。


「それって、腐ってるんじゃないですか、糸を引いてますよ……」


「腐っても食べられるものがあるのよ。

先にかき混ぜて、十分に糸をひかせてからネギと醤油とカラシで整えて完成!」


「私、この匂いダメです」


「無理しなくてもいいわよ。

うーん、おいしい」


「母ちゃん、旨いぞこれ」

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