第39話、其のメイド……相模に向かう

数日後、私たちは秦野を後にして厚木に向かいます。

北西に向かうほど、魔物は強力になってきます。


オオトカゲやリザードマンなどの魔物とともに、灰色オオカミやヒグマが現れます。


そこに輪をかけるように、追手が現れました。


「やっと見つけたぞ、勇者ルイージ!」


「いいえ、この子は大五郎です」


「もうバレてるんだよ。

戸塚の壁面に残された絵で確認したんだ。

メイドと勇者をな」


追手は30人以上います。


「さあ、おとなしくあの世へ行くんだな」


「くっ……」


-こちらです-


あの声だった。


-誘導します-


手薄な一角が明るく見える。


「みんな、私についてくるのよ」


「「はい」」


2mの剣で手薄な一角の男の目をつぶします。


「今よ!」


その一角の後ろは森になっているのですが、そこが開けていきます。


「振り返っちゃダメ、とにかく走って」


ザザザザザッと葉擦れの音がします。


私は大五郎の手をとり、木々の間を駆け抜けます。

それだけ駆けたでしょうか、また声がしました。


-もう大丈夫です-


「あなたは一体……」


-私はサクヤ 今はまだお会いできません-


「サクヤ様……コノハナサクヤ姫様でしょうか」


-はい、いずれお目にかかりましょう-


サクヤ様との会話が切れた。

回線がきれるような感じがはっきりと伝わってきた。


「木花開耶姫様……」


感謝の念を伝える。


「な、何があったのですか」


「神様が、逃げ道を作ってくだすったのよ」


「確かに、森が開けていくのを見ました。

そして、私の後ろで元に戻っていく感じが……」


「優しいお姉ちゃんの声だった」


「いつか、お会いできる日がくるって言ってました」


「本当に神様のお導きがあるなんて……」


「負けられないですわね」


「さあ、厚木までもう一息です」


こうして、夕方前には厚木に到着しました。

厚木は小さな町で、シャガミ川により二分されており、明日は川を渡り、相模を目指すことになります。


翌日、朝一番の舟に乗り川を渡った私たちは相模を目指します。


厚木から約20kmですが、相模は魔都市大江戸に隣接しており、油断できません。

魔物もさらに協力になってきます。

オオウワバミや地竜が襲い来る中、私たちは北上します。


とはいえ、実質的な攻撃役は大五郎だけです。

ここは、全員攻撃体制でいくことにします。


深雪さんは元々格闘系でもありますから、そのままで、亜理紗さんにも剣士の装備で攻撃に加わってもらいます。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る