第35話、其のメイド……カメに乗る

平塚では、結局深雪さんだけしかメンバーは見つかりませんでした。

私たちは三人で次の宿場町である小田原を目指します。


海辺はずっと砂浜が続いてます。

大磯のところで、少し岩場になっているんですが、その先で、ウミガメが砂浜に上がっていました。

それを見つけた子供たちが甲羅の上に乗って遊んでいます。


「かわいそうだから、海に帰してあげようよ」


「えーっ、せっかく見つけたんだもん……」


「ぼく、まだ乗ってるんだ!」


「じゃあさ、代わりにタコをあげるよ」


「えーっ、タコなんて食いあきてるよ」


「いや、そっちのタコじゃなくてこれ」


マジックバックから凧を取り出します。


「やった!」


「おー! さっそくやろうぜ!」


子供たちは走り去っていきます。


「さあ、みんなで海に押し返しましょう」


「はい」「うん」


カメは無事に泳いでいきます。


少し歩くと、沖のほうから声がします。


「おーい」


「あっ、アマンダさん」


アマンダさんが大きなカメに乗って現れました。

横にはさっきのカメがいます。


「やっぱり、マルコと大ちゃんだった。

いやね、この子が母子連れに助けられたっていうからさ。

一言お礼にって来てみたんだ」


「アマンダさん、カメの言葉も分かるんですか?」


「いや、念話ってやつだよ。

カメに言葉なんてあるわけないだろw」


「ですよね」


「どうする、竜宮……じゃない、この先だと小田原か、乗っていくかい」


「いいんですか」


「私も、真鶴で用事があるからいいよ」


直径5m程のカメです。

乗せてもらうことにします。


「お昼ご飯……タコ焼きなんですけど、アマンダさん食べられます?」


「へえ、どれ……

うん、旨い!」


「タコやイカは友達じゃないんですか」


「海獣使いだっていったろう。基本は哺乳類だけだよ。

このカメは特別さね。

それに、海獣だって魚や甲殻類を餌にしてるんだ。

私が食えないわけないだろ」


「そうですよね」


チャプチャプ


「あっ、あれ……お尻?」


「うん、ドザエモンか?」


「いえ、桃みたいですね」


「桃にしてはでかくないか……30cmはあるだろ」


「待ってくださいよ……小田原だと……金太郎はアリとして、桃だと岡山……、

そんな南から漂ってきたとしたら死んで……いえ、腐ってますよね」


「だな、見なかったことにしとこうか」


「はい」


チャプチャプチャプチャプ


こうして、私たちは無事、小田原まで送ってもらいました。

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