第27話、其のメイド……領主の不正を追及する

さて、魔物暴走の後始末ですが、領兵団の集めた魔石が、すべて領主に独り占めされたと噂になっていました。


「仕方ねえから、有志で酒や食材を出し合って慰労会やろうって話になってるんでさあ」


「それって、税金とか使えないんですか」


「税金は、全部領主が管理してて、どう使われたか公開してもらえねえんですよ。

しかも、魔物暴走の対策費として、臨時徴収があるなんて、納得いきやせんよね、まったく」


「でも、八百肉さんは、炊き出ししてくれたんだから、徴収免除とかあるんじゃないですか?」


「とんでもねえ。

免除どころか、出店分もしっかり請求されてやすよ」


「魔石って、どれくらい価値があるんですか?」


「普通ので、一個で粒金5枚くらいですよ。

最低でも1000個くらいっすから、金貨500枚ってところですかね。

まあ、あれだけの要壁を作ってもらったんだし、スリング何とかって新兵器を導入したおかげで、今年は死者ゼロでしたから、費用がかかるのは仕方ないと思うっすけどね」


「えっ、壁もスリングショットも、私と先生と近江屋さんで手配したから、領主なんて関係ないですよ」


「そ、そんな馬鹿な。臨時徴収の請求に、そう書いてありますよ」


「それ、ちょっと貸してください。

先生と相談してみますから」




「先生、領主がこんな文面で税金の臨時徴収をしているみたいなんですが」


「ほう、あのバカのやりそうな事だな。

よし、わしの名義で、領主に請求してやろうじゃないか。

臨時徴収が人頭割で粒金1枚じゃから、全部で金貨1万枚じゃな。

それでは、壁の建築費を金貨5千枚で、スリングショットの代金が金貨1000枚。

球が一万発で金貨4000枚。炊き出しで金貨500枚。

領主の臨時収入分を全部吐き出させてやろう」


「出しますかね」


「これを、副領主のブギョー・ジョウカンに届けるのさ。

領主がこの名目で臨時徴収してるんだから無視はできまいて。

それに、ブギョーは実直な男だから、何とかしてくれるさ」


「でも、本当に支払ってくれたらどうするんですか?」


「全町民に振り分けてやればいいだろう」


先生の笑いは「おぬしも悪よのう」と言ってる悪代官のようでした……


ところがです。

奉行ーじゃない、ブギューさんは、違う方向に動きました。

魔石横領と架空請求とで、カーン領主の責任を追及したのです。

その結果、カーン領主は財産没収の上、放逐となりました。

税の臨時徴収はなかったことになり、領主の没収財産の一部で慰労・感謝祭が盛大に行われることになりました。

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