第24話、其のメイド……決戦前夜を迎える

そうそう、要壁に上るときに階段がほしいというので、追加で作ってあります。


いつの間にか、要壁の内側に露店が並び、要壁までが町になってしまったような賑わいです。

ただ、この露店は、いざというときは兵士の補給所にするということになっています。

八百肉さんも揚げ物を荷車で運び、盛況なようです。

近江屋さんは一般の冒険者向けにスリングショットと鉄球の販売を始めました。


先生が用意してくださった鉄球は約一万発です。

万一足りなくなったら、近江屋さんが提供してくれます。


不思議なもので、武道はダメでもスリングショットの命中率は高いという人が志願してきて、今回の魔物暴走は200人くらいに増えそうです。

魔法を使えるだけの人も、壁の上から攻撃するだけなら参加できますので、女性も何人か加わっているみたいです。


「特殊な訓練なしで、戦力増加かよ。

道場も廃業だな」


先生がそんな冗談を言ってきます。

でも、スリングショットの効かない魔物もいますから、最後は道場のメンバーと領兵団の出番となります。


「ふむ、明朝あたり来そうじゃな。

みんな今日は早めに寝ておけ、3時に集合じゃ」


「では、領兵団へも知らせてきます」


「私は冒険者組合へ」


町全体に緊張が走ります。

万一のこともありますから、いざとなったら避難できるように準備しておくのだそうです。


私は前線へ出ますけど、さすがに大五郎は…と思ったら、大五郎も参戦すると言い出しました。

それでこそ男の子!


「みんなはこれを装備してください」


道場のみんなには、ジュラルミンで作った胸当てと、ヘルメット…、いえ兜。それに手製のスニーカーを渡します。

先生は、スニーカーだけ受け取ってくれました。


「これは、動きやすいぞ」


「胸当ても、周りにゴムを使っているからしっくりくる」


「これなら、頭突きで魔物を倒せそうだ」


大五郎もフル装備です。


「よし、みんな気を引き締めろ。

出発だ!」


「「「おーっ!」」」




要壁には、魔道具の照明がつけられています。


かすかに遠くからドドドドドッと地響きが聞こえてきます。

私は、大五郎の命綱を手すりに接続します。


「大五郎は、この綱の届く範囲で頑張ってね。

お母さんは、状況によっては、別の場所に行くかもしれないから」


「うん。大丈夫だよ。

俺も絶対魔物を倒してやるんだ」


闇の中で次第に大きくなる地響き……

うっすらと紫に染まっていく中で魔物との戦が始まろうとしています。

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