第5話、メイドの知らない物語 01

時は少しさかのぼる。


「やれやれ、行きおったか。

これでわしも帰ることができるな。

どれ、最後に掃除をしておくか。

ふん!」


リュウ師範が変わった。

姿かたちはそのままで、まったく別の何かに…


ダン!


踏み出した足元から、火炎が波紋のように広がっていき、魔物を一掃した。


「おや、カグツチ殿でしたか」


「うん?おぬしは…」


「72魔将軍の末席におります土蜘蛛と申します。

お見知りおきを」


不気味な人の顔をしたクモが宙に浮いていた。


「72というと、ソロモンじゃな」


「あれは、人間が考えたもの。

実際の72魔将軍は日々入れ替わっております」


「そうか。で、やるのか」


「ええ、ちょうど10年後ならば佳境にありましょう。

今、長居するよりも面白そうなので」


「そうじゃな。わしも、10年後目覚めたときにどうなっておるか楽しみじゃよ」


「私のほうは、カグツチ様にやられたということで、このタイミングで離脱するいい口実になりますので」


シュン!


「ふん、糸の刃か。だが、こんなものではわしは切れんぞ」


「ええ、私の欲しかったのはこの血の一滴。

これで、再生できない切断が可能となります」


土蜘蛛がそういうと、カグツチの体がバラバラになり地に落ちた。


「だが、ほのおは切れんぞ」


カグツチの体が燃え上がり元の状態に戻る。

道着が燃え上がり、その強靭な肉体があらわになった。


「今度はわしの番じゃな。

カメハ〇波とロケットパ〇チを参考に編み出したこの技を受けてみよ。

ハ~メ~ハ~メ~波~パーンチ!」


カグツチの手元から火の玉が飛び出す。

それは手首の形をしていた。


「おや、どこを…

…遠隔操作ですか。

くっ、狙いは糸でしたか」


「土蜘蛛らしく地を這っておれ。

続いてUセブンを参考にした、灯火ともしびスラッガーじゃ」


旋盤状の刃が、土蜘蛛の8本の足を切断する。


「ですが、私とて再生くらい…なに!」


「再生の都度、足に絡みついた焔が焼き続けるよ。

おとなしく10年の眠りにつくがいい」


カグツチがそういうと、土蜘蛛の体が燃え上がった。


「カグツチ様と私では、相性が悪いようですね。

では、10年後の再開を…」


土蜘蛛は淡いエフェクトを残して消滅した。


いや、正確には現世から退場したというべきか。

神族も魔族も、不滅の存在である。

そして、彼らの言葉によれば、現世うつしよから戻るとき一旦10年の眠りにつき、再び目覚めるという。


「さて、わしも天界に戻るとするか。

マルコ、10年後の再会を楽しみにしているぞ。

別れ際にお前の体に宿した炎がほむらが、きっと役立つじゃろうて」


カグツチはエフェクトを残し、天にかえった。

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