第7話 到着

 1212年晩秋、ウイグル王一行は、チンギス・カンの行在に到着した。チンギス・カンは、遠路はるばるやってきたウイグル王を歓待し、自身の娘を娶せることを約束し、ウイグル王を第5子として扱うとした。最上級の待遇だった。

 メクリンは、肝心のハッサンがチンギス・カンの長男ジョチの所に行っていたため、しばらくウイグル王の天幕の近くに居続けたのだった。

 まもなく、ジョチ、チャガタイ、オゴデイの三皇子率いる山西方面軍が行在にやってきた。そこで、次男チャガタイと三男オゴデイは噂を聞いた。ウイグル王の居所の近くに、絶世の美女がいる。若い2人は少数の供回りだけでやってきたのだった。

 チャガタイは、ウイグル王に対し、

「その美女を渡せ」

と強硬に言った。オゴデイは、やり取りを見ているだけだ。

 これに対して、どうしていいか分からないウイグル王が黙っていると、近臣が、メクリン姫はチンギス・カンへ引き渡す予定ですと答えた。

 するとチャガタイは、居丈高に、

「ではどうしてまだ献上していないのか」

と問い詰めてきた。

 近臣は、おそるおそる答えた。

「ハッサン殿が処置なさることです」

この発言がきっかけでで、チャガタイはこれまで以上に顔を真っ赤にして叫んだ。

「ハッサンだと。あいつはジョチの犬ではないか。渡してたまるものかよ」

 いやでも外まで声が聞こえてきた。メクリンは、どこかわからないが、とにかくジョチの天幕に逃げ込むことにした。

 ジョチの天幕では、ハッサンを含め、幹部たちが会合を開いていた。山西で得た捕虜をどこに送るか、考えなければならなかった。その時、警備の者が騒ぎはじめた。

 外に出たハッサンは、メクリンの姫が尋問されていることに、驚愕したのだった。

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