第2話 好奇心に弱過ぎる
オルトガン伯爵家、第二令嬢・セシリア。
それが俺の主人の名だ。
セシリアは俺よりも3つも年下だ。
しかし。
(俺なんかより、よっぽど色んな事を知ってる)
昔からよく疑問を抱き、調べ、覚える。
そんな彼女の性質は、「勤勉だ」と言えば聞こえは良いが。
(好奇心くすぐられるものを目の前にすると、途端に周りが見えなくなるんだよなぁ)
ゼルゼンは、そう心の中でぼやきを上げた。
そして思わず苦笑する。
好奇心の虜になっていない時は、年より余程大人びて見えるのだ。
しかしその反動なのか、彼女の行動は。
(ーーあまりに突飛すぎる)
彼女は、未知への好奇心がすこぶる強く、そしてどうしようもなく弱い。
そして好奇心に負けた時の彼女はというと。
(一瞬でも目を離すと、すぐに何かをやらかすし)
例えば、何もないところで転んだり。
登れもしない木に登ってみたり。
時には指先から血が出ていたりする事だってあった。
相手は、曲がりなりにも高貴な身分の人間だ。
そんな人の怪我に、俺はひどく驚き、焦り、呆れたものである。
「お前……ほんの2秒だぞ?! その間に一体どこで怪我してきたんだ!」
そう散々問い詰めた2年前が、少し懐かしい。
因みに、その問いかけに彼女は確かこう答えた。
「薔薇の棘を、触ってみたくって」
どうやら「棘は一体どんな手触りなのか」が気になったらしい。
しかし、相手は棘である。
触れば指に刺さる事など少し考えば分かりそうな物だというのに。
(まったく……無駄な知識があり頭も回るくせに、何故そんな簡単な事が分からないのか)
ホント、不思議でたまらない。
……まぁ、そんな事を「つい」でやらかす辺りが、何ともセシリアらしくはあるのだが。
そして、そんな主人の事である。
今目の前にいるこの主人の泥んこ加減にも、きっと彼女なりの理由があるのだろう。
「……で、一体どうしたらそうなるんだ」
ため息混じりにそう尋ねる。
そしてそれと同時にポケットから取り出したハンカチで、とりあえず彼女の顔についた泥を優しく拭い取ってやった。
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