20ーはれやかなあさに

 ユウトはいつだって笑ってた。


 たとえどんな状況でも、あいも変わらずに。


 俺たちがユウトを褒めても、叱っても、抱きしめても。


 ユウトが誰かから怒鳴られても、殴られても。


 ユウトが誰かを殴っても、傷つけても、いつも。


 ユウトには笑顔しかない。


 なにも語らない、なにも語れない。


 その表面の内側に彼自身の心があることは分かっていても、それを理解することは俺には出来なかった。母さんはもしかしたら何となく気づいていたのかもしれなかったけど。


 だからあの時、ルアさんの側で倒れていたユウトを見つけたとき、俺は――胸に打たれたような衝撃を受けたんだ。


 それはきっと、俺と一緒に目撃したアイカとヒメカも同じだったのだろう。


 ユウトは――泣いていた。


 何も無くなって荒野になったその中心で、膝を落として、えんえんと涙を流して晴れ渡る空に向かって泣き叫んでいた。


 同じ時を過ごしてきて、初めて見せたユウトの笑顔以外の表情。


 あらゆる人から嫌われて、気持ち悪がられた俺たちの大切な家族の初めての涙。


 それを見た俺は自然と、瞼が熱くなったんだ。


 そして、ユウトと同じように涙が溢れた。アイカもヒメカも俺の横で涙を流し始めた。


 気付けば自分たちはユウトの元に走り出していた。身体が焼けてしまうことも、服が消えてしまうのも構わずに。



 そうして、俺たちの異世界での初めての長い長い夜が、ようやく終わりを告げた。




第一章――四つ子たち異世界に立つ 完

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