2-閑話
気がついたらそこは真っ白な世界だった。
見渡すばかりの白い世界で何もない空間。
視線を上にしても下にしても、はては自分の手や足を眺めようとしても見つけることはできなかった。
ふと、目の前に誰かが現れた。
それはとてもきれいな髪をしていて、白い清らかな衣に身を包んだ透き通るような美しい女の人が白い椅子に座っていた。
「そう――あなたたち、帰ってきたのね」
凛とした声が頭の中に響いて、女の人の顔がこちらの方を向く。
やっぱり知らない女の人だったけど、どこか懐かしさを感じるような眼差しだった。
「覚えておきなさい、あなたたちの力は封印されている。私の加護なしではまともに扱えないということを」
女の人が指先を空中に向けると丸い光がぽうっと出てきて、こちらの方にゆっくりと近付いてきた。それが自分の内側に入り込んでくるような感覚がして、それは不思議と心地よい気分になった。
――あなたは、いったいだれ?
「…………わたしは、誰でもない。ただ創っただけだから」
その声はあまりにも無感情だったが――けれど、どうしてだろうか、とても気になるものを感じた。
――あなたは、お母さん?
「…………いいえ、違うわ。あなたたちの母親はあの世界にいる」
そうして女の人は指先を真横に流すと、そこには見たこともないどこかの景色が映し出された。
「あの世界であなたたちがどのような結果をもたらすのか、わたしの関与するところではないけれど、あえて導いてやるのならば……」
そう言って女の人は立ち上がってこちらに近付いてきた。
彼女の素足はゆったりとした足取りで、裾から伸びる細い腕と指先が持ち上がってそっと頬を撫でるような感触がした。
「どうかあなたたちの思う通りに、あなたたちの長い旅路にどうか幸あれ」
女の人の口付けを額に感じて、目の前の彼女がどんどん遠くなっていく。
そして、あの知らない景色が徐々に近付き、視界いっぱいに広がっていった。
何の確証もなかったけど、あの人はきっと神様だ。
うすれゆく意識の中でそんなことを何気なしに感じとっていた。
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