かわいいあの子
終電
かわいいあの子
「ねぇねぇ、あの子めっちゃかわいくない?あの、運転手さんの近くにいる人」
「まぁ、そうかな…?」
「何その微妙な反応!かわいいじゃん」
「じゃあ、かわいい」
「あっ、彼女が隣にいるのにそんなこと言って!ぜっこーだっ!」
「ほら、めんどくさい…」
「ふふふ、冗談だよ。イッツ ア ジョーク!」
「心臓に悪いからやめて」
「やっぱり、かわいいは正義だと思わない?」
「まぁ。たしかに」
「でもさ、じゃあかわいくなかったら、ブスだったら悪なわけ?」
「誰もそんなこと言ってないだろ」
「よく言うじゃない。かわいいは正義だとかなんとか。どう思う?!」
「…そもそも、かわいいかどうかなんて好みの問題だろ」
「あっ!そうやってすぐ逃げる〜!その逃げ方一番ずるいから」
「じゃあ、どうすればいいわけ」
「んー、とりあえず隣にいる大好きな彼女を褒めておけばいんじゃない?ねぇ、今日いつもとちょっと違うんだけど」
「…髪切った?」
「…タモリじゃないんだから!違うよ!いつもとメイクの系統が違うの!しかも今日は香水もつけてる!」
「…そんなん、気づかないよ」
「だから言ったの。…ねぇ、どう?」
「かわいいよ」
「えっへへ。ありがとう」
バスの前の席に座るカップルの会話についつい聞き入ってしまった。
かわいいは正義なら、ブスは悪、か。
わたしは何が正解なのかは分からないけれど、こんなに幸せそうに笑うかわいい彼女が、間違っているはずがないと思う。
かわいいあの子 終電 @syu-den
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