第4章 2012年 その8 向日葵

   「ひまわり1 生垣計画」


よき夢を 土のお布団そつと押し松葉牡丹のひげ根を寝かす


卯月より卯の花咲くまで抜かず置く キラン草似のほたるなんとやら

                    ==トキワハゼとのちにわかる


かたばみと謎の藤色雑草に盾となるべし ひまはりの群れ==向日葵の生垣計画


ひまはりの抜き捨ててありいづこより悪意はくるや わが咎なるか


階段を駆け上がりゆく紅顔の子の後ろ影 永別の駅




   「ひまわり2 ラプソディ」


逝き果ててやつと向日葵どつと植ゆ 稀代未聞きたいみもんの垣根六尺


向日葵はわれらがしるべ あてどなき母もつ少年じつと見上げし


隣人には今年も変人 ヤブカラシ露草ドクダミひまはり茂る


常の風台風にも耐へ わが与ふ少しの水を待つひぐるまの


向日葵の茎をゆつたり巻く蔓にピンクの朝顔 日々ひとつ咲く


はなびらのやうなる月を恋ふのやら 秘かにも立つ夜の向日葵




   「ひまわり3 生首」


ひまはりの下向く花芯 熟れし実を地に落とすため食べられぬため


かく重き花首かかげまた曲ぐる向日葵の茎 一握り以上


ひぐるまの黄色縮みてさも重き まろき花芯を下より見上ぐ


花首の俯くを切るその茎の意思ある剛さ この向日葵は


花鋏の切り残す茎 数本の繊維に下がるサンフラワーの顔


敵将の生首取りてぶら下ぐる滴る重さ 向日葵の


花の顔三つ 馬穴バケツをうっちゃりぬ無駄に曲がりし茎にはあらぬと




   「真夏の空を」


文月から葉月へ炎暑続く日も 刻よ余りに疾く去るなかれ


空中の蒸気冷ゆれば夜露あり 小さき草々今朝も増えゆく


数分の通り雨過ぎ人も葉もはぐらかされて わづかの雫


まだ咲かぬ青き朝顔まだ生れぬ雲の嶺恋ふ 梅雨明けすぎて


空の青見上ぐるたびに癒さるとふ子の言葉 わが青を着る ==twitterに読む


遠く住む子は夏空の紺碧をひとり折々 うつとり見上ぐと


後ろよりもしもしの声 振り向けば知らぬ顔する携帯会話

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