第4章 2012年 その6 新樹
「金色の大満月」
日は陰り南の庭にすず風の流るる頃合ひ 西日は黄金
夕七時高く孤独に満月の星を隠して ただ澄みし空
斜めなる月の軌道がかろうじて満月見する 絶妙楕円
ETの大満月に向かふ影 最終便の光点滅
「新樹」
さらさらと傘に音する小糠雨 薄き白布を新樹にかけて
紫と赤の花よりもたらされ うす緑なるこのさや豌豆
万緑と言ふべき柿の若葉陰 きらり幼きかなへび動く
きらきらとヘデラの繁みに花咲くは 新樹のしたのこもれびなりし
母の日のブラウス持ちて青葉道 曲がりし背なの隠るるやうに
鉄塔はいづこのものぞ 新緑の波わたり来る高電圧線
豊かなる川面に新樹の映ゆるさま 早苗もそろひ輝き渡る
「孫歌」
婆ちやんの長寿と愛に意味ありと 学者の説けば孫歌詠まむ
「オバアタン」出会ひて笑ふ二歳児の 別れのときは
この赤き髪はたれ似と問はるるに 心秘かに吾なりと思ふ
暖かき二歳のからだ わが胸と膝にぴつたり収まるを抱く
忙しさに父母邪険なるときあらめ バアバはキミの遊び友達
「月と日」
まどろめる伏月仰ぐ 早出にて卯の花
二十四年
雨の夜を豊かに濡れし庭のもの
陽のリングあの新月も嘘のごと 望月白く
==世紀の金環食
台風の
犯罪は社会の罪と思ふわれ 困惑しゐる言ひ募る人に
白骨のひとつだに無し黒髪の一束恋ふる声 三陸に
満州を逃るる崖を落ちて往く愛馬の声を 父は忘れず
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