第2章 2007年 その3

   「小さな溶解」


厄災に遭ふことなくて歩みこしわが道の辺にしかばね 水漬みづ


けふわれはイメージを得つ命とは打ち上げ花火 黒き宇宙に


霜柱踏みて出会ひし菊の葉の 幼きころに驚きし色


恨むまじと頑なに曲げ過ごしきて 今ひた満つる受容の海は




   「覚悟の体」


己が日をみな生きあらむ 今しばし放下ほうげいつとき風呂に溶けゆく


体勢は整へておけ 助けてと今に聞こゆる闘ひに出る


ふたつなきこの肉体を運営し善悪為さしむ かくも精妙


久々に相見し吾子に太ったねと言ひてしまひぬ 詫びもせぬまま

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