11.夏の始まりの終わり
波の音を聴きながら、しばらく花火を楽しんでいた四人。何が楽しいのかもよく分からないが波打ち際を行ったり来たりしてはしゃいだり、燃え滓となった花火をバケツの水の中にジュッと入れるのを見たり。
それにも大分飽きてきたのと、巫女くんが駐車料金を気にしてしきりに携帯を見ていたので切り上げようと地雷ちゃんが提案した。
「残りは神社で点けない?」
提案しておきながら、神社が火気厳禁かどうかも分からなかったので、その場で巫女くんにアイコンタクトで訊ねる。
「屋上なら」
巫女くんの返事はあっさりと。
社務所のコンクリートの屋上なら、境内でもないし特に何も置いていないから好きに使っても平気だ。
そうと決まれば話は早い。
排水溝にバケツの海水を流し、花火の燃え滓はゴミ箱を探したがなかったので、ビニール袋に包んでバケツと一緒にトランクに放った。
やたらと高い駐車料金を払うと車に乗り込んで、寄り道なしで神社に帰ることにする。
神社に到着したのはそれほど遅い時間ではなかったが、巫女は欠伸を噛み殺した。
近所のコンビニで棒アイスを買って、裏口から社務所の階段を上がる。
屋上の扉を開けた。
他の住宅をやや見下ろす、コンクリートの狭い屋上だ。
僅かに涼気を含んだ風が頬を撫でているのが心地良い。巫女が隣接の倉庫からガチャガチャとパイプ椅子を人数分持ってきて、四人はそこに座った。バケツを囲んでまた花火に火をともし、アイスを齧りながら小さな火の玉を眺める。
流石に一日中遊びまわっていたので皆疲れ、口数も極端に減っていた。アイスを食べ終わったら棒を花火と一緒のバケツに入れる。
「巫女くん明日早いんだっけ」
ギャルちゃんがふと訊ねた。もう喋ることはあらかた喋り尽くした後でも、なお話題を振ろうと頑張っている。
「早い。明日は大安だから地鎮祭が……ん、何故か訊いてくるということはもしかしてェ!? 手伝ってくださるぅ……!?」
巫女は呻き声を上げながら椅子に深く腰掛け、頭と手をだらんとさせた。疲労で興奮気味に喋る巫女くんだが、ギャルちゃんは逆に真面目そうに頷いた。
「行こうかなーって。神社でどんなことしてるのか気になるし」
冗談のつもりで言ったのだが、ギャルちゃんが意外な興味を見せてくれたので巫女は手足をぶらぶらさせながら喜んだ。
「じゃあ、明日6時集合をお願いしたく!明日は私は巫女じゃなくて神主だから、代わりを頼みましたよギャルさん。服は神楽殿にあるんで、適当に着替えてくださればよろしいかと」
「顔面ギャルでも大丈夫?」
「無問題! 大歓迎採用でございますよォ!」
目を閉じてハイテンションに捲し立てる巫女をお嬢が諌めた。元々こういう口調で喋っていたのが、疲れから素に戻っているようだ。昼間なら構わないが、時間が時間だ。
「巫女くん。夜だから静かにね」
「申し訳ございません……」
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