7.家庭訪問報告

「……そんなわけで、お嬢の家にお邪魔してきたというわけだ」

旧車のハンドルを握り、日光を反射する長い黒髪とは対照的に、中性的な口調で喋る巫女服の女性──通称巫女くんはお嬢の家を訪問したことを同乗者達に簡潔に報告した。


「やっぱりメッチャ豪邸? っていうか和風なの、洋風なの?」

「お嬢の家、私も知りたい」

ギャルちゃんと地雷ちゃんが金と薄桃の髪を揺らして巫女くんを質問攻めにする。巫女としては車の質問ならいつでも、いくつでも大歓迎だったが住居の質問ときたか。これは自分の裁量で答えていいものではないだろうと思い、赤信号で停車した際にお嬢に目線で問いかけると「いいよ」と返ってきたので二人の質問に答えることにした。


「悪目立ちするほどではないけど、確かに豪邸だったよ。洋風の……輸入住宅、とかいうやつだったかな? イギリスとかアメリカにありそうな感じの家だった」

二人の凄い、とか見てみたい、という感想を聞いてお嬢は不思議そうに、そして上品に笑った。


「二人も来ればいいのに」

しかしお嬢の予想とは違って、二人の反応は微妙だった。


「私は無理。リスカ跡が目立つから。気を遣うの苦手だし、化粧はバチバチに濃くしないと落ち着かないんだよね……」

「ウチも黒ギャルじゃない時は見たくないって言うか、そんな感じ」

二人とも、実のところ確固たる信念を持ってそれぞれのファッションをしていた。ギャルちゃんは言わずもがな、地雷ちゃんもフリルとリボンの付いた洋服と病んだような可愛らしさのメイク、それに軟骨のピアスを好んでやっている。


一方、四人組の中で最も見た目が特徴的な巫女くんの方は、成り行きでこの格好をしているだけ、アイデンティティは車の方にあるため服装に拘りはないのだった。巫女服は仕事着だし、姫カットも多少インパクトはあれども昔の日本の髪型であることは確かなのだから、説明すれば受け入れられるのだ。


「ええ、そこまで気合い入れなくても大丈夫なのに」

「巫女くんの話聞くと、けっこードレスコード厳しそうだから。それにお嬢とはいつも遊んでるからあんまいいかなって」

お嬢はずっと家の環境に慣れているものの、ギャルちゃんと地雷ちゃんはお嬢自身はともかく、自宅訪問には拘りを曲げてまで行きたいとは思っていないようだ。巫女くんはそんなやり取りを苦笑しながら聞いていた。


こうやって遊んでいるのだから家のことは気にしなくてもいいだろうという意見に、それもそうかという流れになってこの話は終わるのだった。

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