3.巫女くんの生活
三人の友人をそれぞれの家まで送り届け、巫女もすっかり暗くなった夜道を走らせて神社へ帰る。今日はカフェで新作のキャラメルラテを飲んだ後、カラオケに行ってだらだらしていたのだった。
新作のキャラメルラテは美味しかったけど、なんとなく甘さが強い。次行く時は別のものを頼もうと巫女は思った。
地下駐車場の車と車の間に器用に駐車し、神社の本殿裏にある玄関口の鍵穴にディンプルキーを使って解錠し、帰宅する。
「叔父さんただいま」
神社だが、なぜか住居部分はヨーロッパ風のハーフティンバー様式だった。
脱衣所で巫女服を脱ぎ、上は洗濯籠に、袴はハンガーにかけて後で干しておく。袴は乾かすのも面倒なため、毎日は洗わなかった。Tシャツとハーフパンツ姿になった巫女はリビングへ向かった。
革張りの大きなソファを占拠しているのはボルゾイ犬のシャシャとミュミュだ。飼い主にはあまり興味がないらしく、巫女の方をちらりと見てすぐに目を閉じた。
「おー、おかえり。晩御飯できてるよ」
車のエンジン素材そのままのコーヒーテーブルにノートパソコンを置いて副業に精を出す叔父は、昼間と同じ作務衣姿で無垢材のフローリングに座っている。ソファは犬に占拠されているからだろう。
まだ夕食は食べていなかったようで、二人分の食事がラップがけされてアイランドキッチンに置いてあった。白米にメインディッシュはつぼ鯛の干物、サイドに何かの野菜だ。冷めていたので電子レンジで温めてから食卓に出した。
車は乗り回す上、住居も洋風、飼っている犬も洋犬だが腐っても神社なので、本居宣長式に食前の挨拶はする。
「たなつもの ももの木草も あまてらす 日の大神の 恵み得てこそ。いただきます」
手を合わせ、食材に感謝しながら食べる……まあ普通のことだ。巫女は食事中に会話を楽しみたいタイプだったので、食事中は黙っていなければならない神社の暮らしはそこだけが不満だった。食後の挨拶も同様に行い、食器を洗って乾燥棚に入れる。
後は風呂に入って、歯磨きをしたら寝るだけだ。
風呂から上がり、二階にある自室で海水魚水槽の照明を落としてベッドに入ろうとすると、シャシャがベッドの中央に陣取っていたので端にお邪魔して、SNSを軽くチェックしてから少々窮屈ながら眠りについた。
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