第4話 藪の中
登場人物
同棲7ヶ月目。
※文中の団体競技、個人競技の意味がわからない場合、第2話を参照ください
ある夜の寝室。
俺と奈々未は裸のままベッドに転がっている。
奈々未は俺の腕に頭を乗せ、俺は空いた掌で奈々未の柔らかな腰のライン撫でている。
俺は求め合った後の、このまったりとした時間が好きだ。
「――そういえば」
「ん?」
「この間、男女の「団体競技」と「個人競技」の話をするきっかけになった雑誌があっただろ? あの雑誌によれば、女の人の約9割が「団体競技」中に演技をしたことがあるらしいんだ」
意趣返しというわけではないが、俺はちょっと奈々未の困った顔が見たくなって話を振った。
「……それで?」
「奈々未はそういうのどう思う?」
奈々未は、少し考えるような素振りをしたあと、ポツリと言った、
「まぁ、わからなくもないけど」
「良くもないのに、女の人はなんでわざわざそんなことするんだろうな?」
「それは、一生懸命がんばってる相手に悪いとも思うし……。それに、そうやって相手の気分を盛り上げてあげれば、早く終わっていいからじゃない?」
――なんか、後から言ったほうが本音ぽく聞こえるが。
「じゃあ、俺にも演技してたりするのかな~?」
さらにしつこく絡もうとする俺に、少し真顔になった奈々未が言った。
「もし、演技してたって言ったらどう思うの?」
「それは……少し傷つく、かもな」
「それじゃ、演技してないって言ったら?」
「そりゃうれしいけど、どっかでほんとかな、とも思うかも」
ふーん、と呟いた後、奈々未が顔を寄せてきた。
「聞きたい?」
暗がりの中で、黒目がちな奈々未の瞳がさらに大きく開き、俺を見つめる。
「……いや、いいです」
この世界には、知らないほうが幸せなこともある。
きっと。
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