EPISODE49:「決着」
★★★
男――ヒルヤマ=ミツルはレアなアイテムに縁があった。
小さな頃から目利きが得意で、安い値段で貴重な物を手に入れたり、遺跡で強力な武器・道具を手に入れる事が出来た。
例えば――
ゴーレム量産装置。
永久機関の巨大ロボ。
鑑定の
そのおかげで純粋な戦士としては戦闘力がギリギリ一流なのをカバーして功績を上げて行った。
そんなある日、とある遺跡でとある
『どうしますか……』
どうにか増やすか踏み倒すか出来ないかと思っていた。
そんなある日、趣味で人混みの中で鑑定を使っている時に、偶然とある異能力を持つ少女――クオン=マリカを見かけたのだ。
『……あの能力を奪えれば……』
その為に全チップをヒルヤマ=ミツルは賭けたのだ。今更諦める事など出来ない。
☆★☆
そして戦況は――膠着していた。
元々この二人の戦闘スタイルは似ている。多彩な手札で圧倒。
カイならば友から受け継いだ
ヒルヤマならば遺跡で見つけたり、本来の値段より安く買った多彩なアイテムを使う。こちらも様々な状況に対応できる。
だからこその状況。
カイは【ミメーシス】を主体に様々な手数で攻め、ヒルヤマは巨大ロボに召喚した巨人のような召喚獣を合体させ強化させて様々な武器・兵器を装備させてそれに対抗する。
「ふん!」
カイは手に持つ
ロボは
(う~ん、膠着してるな~)
(このままだと長引きますね)
両者分析する。互角な状況だが――ヒルヤマは突破口を見つけ出していた。
(彼の使う奇妙な武器・道具はどうやら一種類ずつしか使えない。ブラフの可能性もありますが)
正解である。……正確には
(そして、彼には足手纏いがいる)
巨大ロボをヒルヤマが使い始めてからカイは右手に
『ちょっと失礼……』
『し、シンゲツくん!?』
『この方が守りやすい』
元々彼の本領は何かを守る時。だがやはり行動は制限される。とは言えまとめて吹き飛ばす訳にはいかない。
((
迷うカイとヒルヤマ。それでも思考しながらも攻撃の手は緩めない。膠着状態の中……
「……シンゲツくん」
マリカが声を掛けて来た。彼女の性格から只声を掛けただけというのはありえない。無言で続きを促すカイ。
「あのロボットにギリギリまで近づく事ってできる?」
「……どうにかできるの?」
「うん」
頷きには力強さがある。だからこそ――
「任せろ」
ここで答えなければ男ではない。
(連戦が続いているから消耗が激しい。ギリギリか?)
自分の状態を確認する。戻って来てからちゃんとしたエネルギー供給が出来ていない。応急処置的な物ばかり。その上戦いっぱなしなので後どれくらい持つかはわからない。しかも今から切る手札は特に消耗が激しい。しかし――
「力を貸してくれ」
地面に降り立つカイ。影から狼達が顔を出す。そのまま溶けるようにカイの体に纏わりつく。
――《チンギス・ハーン》
カイの髪の毛が伸び狼の耳と尻尾が生える。首から下に細身の甲冑じみた装甲が装着される。よく見ると犬歯と爪が長くなっていた。
これこそが【ボルテチノ】の奥の手。狼を纏い獣化する。攻撃・防御・速度・再生を引き上げる。彼女はこれを必殺技と周知させていた。だがそれは違う。もう一段階ある。
「掴まってろ」
「……」
「振り落とされるな」
「う、うん」
「舌を噛むな」
「わかった」
マリカにそう言いそのままマリカを両手で抱え……
ドゴッ!
飛び上がる。今まで以上の加速。それにヒルヤマは反応出来ない。巨大ロボットというのも災いした。咄嗟に
「遅い」
もう懐に潜り込んでいた。そのまま拳をロボットへ叩きこむ。揺れるロボット。内部も勿論揺れる。
「任せた」
「うん」
マリカがロボットに触れる。そして――
「あった」
次の瞬間、結晶のような物が彼女の掌に握られていた。目的達成を確認したカイはすぐに離れる。
「ありがとう。これで大丈夫」
その声と同時にロボットの動きが止まる。そして自壊していく。そこから脱出しようとする人影が一つ。
「逃がさない」
獣化を解除したカイの手には両端が刃となった弓が握られていた。宿敵の【十二星具 ホロスコープス】。本体は指輪と腕輪であり、そこに登録した武器に能力を付与し
こうしてこの騒動の黒幕は仕留められた。
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