EPISODE50:「血絆」
☆★☆
そして戦いは無事に終わったのだが……
「きゅう……」
「シンゲツくん!?」
ぶっ倒れるカイ。原因は単純明快。エネルギー切れである。
「だ、大丈夫?」
「大丈夫。問題ない」
介抱するマリカに返事をするカイだったが……
「……それ絶対に大丈夫じゃない人の言葉だよ。それに顔も青いし」」
「時間経てば(多少)マシになる」
カイの頭を自分の膝にのせているマリカに彼は肩をすくめて答える。
「どうにかする方法はないの?」
「……」
マリカの問いにカイは沈黙を持って答える。あるにはあるのだが……
(友人とは言え、
それは吸血。もとよりカイのチカラの元は
とは言え彼女よりコストはマシになっており、血肉となる物――タンパク質等でも代用可能となっている。その代わりコスパが悪い。やはり血液摂取が一番効率が良い。
かつては仲間や友人に頼んでいたが、まだ交流を始めて日の浅いマリカには頼みずらい。
そんな事を思案しているカイだったが……。
「……」
そんなカイの様子を見ていたマリカは何かを考えていたが、暫くして意を決したのかカイを見て。
「……シンゲツくん」
「ん?」
「最初に謝ります。ごめんなさい」
「……何に関して?」
「わたしは読心能力を持っています」
それはマリカがストックしているチカラの一つ。とはいえそこまで万能なモノではなく条件がある。それは相手に触れる事。そして制限もあり何でもは見えない。今現在考えている事と多少の思い出くらい。
「……悪いな、嫌な物見せて」
「え、ううん。謝らないで。そこまで酷い物は見ていないから」
マリカが見たのはカイと友人達の交流だった。見てて暖かい気持ちになった。
「それで本題なんだけど――今あなたがなにをすれば回復できるのかがわかります」
その中に友人達の一部(異性)が彼に血を吸わせている所もあった。
「!」
という事はつまり――
「見た?」
カイの問いに顔を赤くするマリカ。沈黙の肯定であった。
そして彼女は襟元を開ける。まるで血を吸わせやすくするかのように。――少しだけだが胸元の谷間と薄い青の下着が露わになる。
「えっと、その……どうぞ?」
「……」
その動作で察するカイ。流石に躊躇われるのだが……
「……でも」
「献血みたいな物だから、気にしないで」
そこまで言われたなら男が廃る。ならば
「じゃあ……」
名残惜しいが膝枕から起き上がる。そして正面に向かい合い触れ合える距離まで近づく。そして――
「いただきます」
その一言を持って首筋に顔を近づけ噛みついた。
「何かおかs!?」
最後まで言えなかったマリカだった。
そして血を飲んだカイは回復した。だがマリカの方は少しだけ消耗したようだった。因みに首元に傷はない。カイもメアリーも相手の肌を傷つけないで血液を吸う術がある。
……そして吸血行為の感想は――
『……ノ、ノーコメントでお願いします』
との事だった。ただこの後マリカがカイに定期的に吸血させるようになったのは余談だろう。
その後、ストックしたチカラで何とか帰還。そして説明や後始末に追われたものの、どうにか無事に実習を終えたカイだった。ただし――
『後で色々聴取あるよ。面倒だろうけどさ』
『ですよね』
『うん。死傷者出ちゃったからね。とは言っても今日はいいよ。疲れているだろうからね』
『ありがとうございます。お言葉に甘えさせて貰います』
『うんうん。それでいいのさ』
とは担任の談。
実際当たり前であろう。いきなり家族が死にましたでは被害者が納得しないだろう。とは言えこの日はどうにか家に帰る事が出来た。
「……疲れたな」
「そうだね……」
帰り道はマリカと話しながら帰るカイ。
「これで暫く面倒な事はないといいんだけど」
「……対校戦があるけど」
「……」
何か起きそうな気がしたがとりあえず今は勘がない事にするカイ。
「と、とりあえず暫くは大丈夫!きっと、絶対」
「う、うん」
そのまま会話は途切れ黙々と歩く二人。暫くして分かれ道に到達。
「じゃ、また来週」
「うん。またね」
そしてそのまま家路に帰ろうとしたカイだったが――
「カイくん」
マリカに名前で呼ばれ振り返る。
「今からあなたを名前で呼ぶから、わたしのことも名前で呼んでくれませんか?」
彼女の言葉にカイは――
「わかった――マリカ」
そう答えた。
その答えにマリカはふんわりと微笑み、それに釣られてカイも笑った。
【旧作】闇鍋のデカログス 亜亜亜 無常也 @aaa_610_d16
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