EPISODE42:「点線」
☆★☆
引きずり出した青い宝珠をカイは握力で砕こうとするも……
「む……」
存外硬い。なので――
「フン!」
一度手から離し両拳で挟み込み砕いた。そして怪物から離れる。
「どうなる……」
核である青い宝珠を無くした怪物は動きを止めていた。そして――
「GA……A……」
呻き声を上げ体が萎んでいく。そのまま倒れて生命活動を停止した。
「フウ」
その様子にカイは一息付く。そして怪物の成れの果てに近づき完全に死んでいるかを確認。
「大丈夫そう……だな」
その様子に彼が出したのは収納に使う万能
「収納っと」
(これで終わったよな……)
怪物は倒し終え、ロボットはイオリが片付けるだろう。残りのゴーレムは対処法さえ分かれば後は野となれ山となれ。問題は黒幕の目的だが自分とは関係ない……と思うのだが
「この感じ……胸騒ぎが止まらない」
嫌な予感がする。なので――
「とりあえず戻ろう」
カイは来た道を急いで戻る事にした。
道中特に何もなく待機場所に到着。結界を一部開けて貰い中に入ると――
「アレ?首謀者達は?」
イオリと複数の教師の迎えられる。
「もしかして――殺しちゃった?」
「ええ」
「「「「「「……」」」」」」
カイの言葉にイオリ以外全員が沈黙してしまう。
「殺さずには済まなかったの?」
「殺してやるのが情けでしたので」
一方イオリはあまり表情を変えずに訊ねる。それに答えながらカイは首謀者達(が融合して生まれた怪物)を出した。
「「「「「「!」」」」」」
「うわあ……」
全員が驚く。イオリだけはいち早く立ち直り怪物に近づき指でつつく。
「なるほど。こうなった訳ね。――原因は?」
「
「……アレを使ったのか!?」
教師の一人――歴史の教師――が驚く。彼は
「はい。赤はほとんど使い切られ、黄は厳重に管理され、青はほぼ破壊されたはずなのに……」
「誰かが保管していたのか?……というかシンゲツ、お前詳しいな」
「色々あったんで」
肩を竦めるカイ。そしてイオリに視線を向ける。
「イブキ先生、そちらのロボは?」
「……ああ。倒したよ」
少し歯切れの悪い言い方。
「何かあったのですか?」
「アレさ、妙に強くてね中身見てみたら……」
「ら?」
「人が入ってた」
「!」
その言葉に目を見開く。
「炉か!」
「うん」
魔力で動く機械やゴーレムの動力として人をパイロット兼炉に使う場合がある。中にはただの炉にして利用する場合もあるが当然禁止である。
「その人は?」
「生きているよ。ただ……」
「?」
「衰弱が激しい。それに」
一拍置いて告げる。
「皮が剝がされている」
「え」
「一体何のためにやったんだかね~」
イオリがそうコメントするがカイはもう聞いていなかった。点と点が繋がり始めていた。
(ゴーレム、怪物、青い宝珠、ロボット……)
こめかみを触る。カイの考え事をする時の癖。
(これらは全て陽動。だとすると目的があるはず……)
ふと思い出す。
「先生方!皆の避難は?」
「ん?ああ、全員終わったよ。幸い大怪我もなく」
「教師や探索士にも死者はいない」
「そうですか……」
少しだけ安心するカイ。だがふと【アリアドネ】の感知を使う。そして――
「!」
ある事に気づき顔色が変わる。その様子にイオリが気づく。
「どうしたの?」
「いない……」
「え?」
聞き返そうとするがカイは走り出していた。しかも――
バリイイン!
時間がおしいとばかり結界をいつの間にか握っていた片手用の
「「「「「「……!」」」」」」
その様子に呆然とする教師一同。イオリはすぐに起動して思考。
(彼は何かに気づいた。……「いない」?誰かがいない?)
カイの行動原理を思い起こす。
(あの戦いでそれを止めたボクらにすら攻撃を仕掛けようとした)
模擬戦を思い出す。
(だけど――友人であるハヤカワ君とクオン君が止めてどうにか止まった)
日頃の言動からでもわかるが彼は友人を大事にする。……ぶっちゃけるとそれ以外の他人は心底どうでもいいと思っている。
(……まさか!?)
そこに至り思い至る。そして彼はまだ機能停止している教師達を呼びかける。
「今すぐに点呼を取って!」
「え」
「全員に!生徒、教師、探索士問わずに!早く!」
「あ、ああ」
そしてイオリは走る。とある事を確かめる為にこの結界を維持している人の元へ向かった。
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