EPISODE40:「双闘」

 一方同刻。元剣轟VSロボットの戦いは――


「♪~。やるね」

「目標健在。排除続行」


 拮抗していた。


 最初ロボットは装備されている機関銃マシンガンとミサイルを使いイオリを接近させないように立ち回り始めた。だが、それらは全て曲刀シミターと風の刃によって斬り落とされる。その為ロボットは弾幕の密度を上げる。


『なるほど。そう来たか。なら』


 あちらが立ち回りを変えたならこちらも変える。イオリが使ったのは〈風刃〉と同じ位のお気に入りの技。


 ――〈暴虐風鎧〉


 風を周囲に纏い鎧とする〈風鎧〉。防御力――特に飛び道具系等に強くなり、副産物として移動速度も上がる為、近接戦闘を得意とする魔導士に好まれている。それをイオリはアレンジを加えより強力な物にしており、防御力と機動力は先程よりも上がる。だからこそあっという間に接近されてしまう。


『はい』


 曲刀シミター一閃。機関銃マシンガンの腕が落ちる。幸い黄金真鍮オリハルコンが使われているのは表面のみ。それに加えイオリの曲刀シミター緋々色金ヒヒイロカネ製。しかもそれに蒼鋼ブルーメタルを加えられている最高峰。極めつけにそれを振るう剣士は超一流。――斬れない物はあんまりない。


『これで終わり』


 もう一閃される曲刀シミター。今度は腕ではなく胴体を狙いに行く。止めを刺しに行く。だが――


 ガキン


 ロボットはもう一つの腕で曲刀シミターを受け止める。ロボットアームで挟み込む。そのまま折りにかかるももう一方の曲刀シミターが迫って来たのですぐさま武器破壊を止め下がるロボット。再び間合いが離れる。


『右腕損傷』


 ロボットは自身の損傷具合を確かめ……


『修復開始』


 右腕から液体金属のような物が出てきて新しい腕となる。とは言え複雑な機構は再現出来なかったのか先端が鍵状の刀剣となる。


『修復終了。攻撃続行』


 今度はロボットからイオリに近づく。そのまま近接戦闘に移行する。そして冒頭に戻る。


(中々やる……)


 イオリが内心舌を巻く。最初近接戦闘を仕掛けてきた時はすぐに終わると思っていた。だが中々切り崩せない。それどころか……


「攻撃命中。学習、強化」


 ロボットの右腕の刀剣がイオリの肩を軽く斬った。

 このロボットは戦闘開始からドンドン動きに無駄が無くなり強くなっている。学習して動きが最適化されている。


(これは……時間掛けると不味いかもね)


 そう思うイオリ。だが……


「これだから戦いはやめられない」


 彼は元剣轟。戦いに愉悦を感じる。それが強敵であればある程それが顕著になる。だからこそ彼はこの戦いを楽しみ始めていた。……本職や役目をそっちのけにしている。








 そして時間は戻りカイVS怪物。こちらはどちらも動かない。


(さて……どうするか)


 カイは戦闘における選択肢がは多い。その為相手の出方を見てそれによって切る手札を選ぶのが常套手段。だからこそ出方を伺う。


 咆哮を上げた後、怪物は辺りを見渡し――


「……」


 カイを確認する。そして……次の瞬間にはカイのすぐ近くにいた。


「!」

「GAA!」


 四本の腕の内の上の右腕で握る戦斧バトルアックスがカイ目がけ振り下ろされる。だがそれはカイに避けられる。


「GAAAA!」


 それに怪物は残りの腕に持った武器――両刃剣、十文字槍、大盾(武器ではないが打撃武器になる)を滅茶苦茶に振るう。生半可な魔導士ですら避けられずミンチに

なるであろう攻撃。だがそれをカイは至近距離で全てを回避。


(早いな。そしてパワーもある)


 しかも分析する余裕まである。の密度ならまだどうにかなる。過去異世界には手数が更に多いのがいた。


「防御はどうかな」


 ボソリと呟きカイはストレートパンチを怪物に当てる。かつての模擬戦とは違い手加減なしの殴打。下手をしなくても死ぬ盟友の一撃。だが怪物はダメージ等ないかのように攻撃を続行。


「フム」


 攻撃を避けながらカイは思考する。


(手ごたえはあった。でも硬かった。防御力も高い)


 両刃剣の一撃を体を屈む事で回避する。


(純粋にステータスが高い。問題は……)


 十文字槍の突きを体を横にズラして回避。


(それ以外に何か特殊能力はあるのか?)


 大盾の面攻撃に蹴りを当て相殺。その威力を生かしてそのまま間合いを取る。


「試してみるか」


 彼が出したのは柄だけの刀剣――【ミメーシス】。そこから一瞬で刃が現れる。今回選んだのは身の丈以上の長刀。物干し竿のような刀。そのチカラは……


 斬!斬!斬!斬!斬!斬!


 刀を何度も振るうカイ。間合いまでは遠いがその攻撃は怪物を捉える。これこそが長刀のチカラ――斬撃延長。本人の攻撃動作無しには発動できず、繰り出した一閃の威力が特に上昇するわけでもない。しかも使い手の動きが落ちれば切れ味も低下してしまうという、あくまで攻撃範囲の拡大しかない。だが振るう剣士が一流なら凄まじいモノとなる。だからこそ悪友も気に入ってよく使っていた。


「GAAAAAA!?」


 怪物は斬撃を喰らう。とは言え全弾喰らったわけではなく、急所狙いはどうにか弾く。それでも凌ぎ切れず槍の腕が落ちたが……


「あらら……」


 あっという間に再生する。しかも武器まで元通り。


(再生力は高い。そして肉体から武器を作ってるのか……)


 武器破壊は駄目そうとカイは分析。


「まあ地道に詰めていくか」


 そう言うとカイは刃を一度無くし新たな刀剣を出す。それは刀身から幾つもの枝刃が出ている刀。七支刀が近いが枝刃が八本あるので九支刀とでも言うべき物。これも悪友のお気に入り。


「来いよ。雑魚」


 カイの挑発。それに怪物は――


「GAAAAAA!!」


 咆哮と突進を持って答えた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る