EPISODE39:「末路」
そして――結果は……
「う……」
「あ……う」
「い、痛い……」
前回と同じだった。とは言え……
「まあ前回よりは持ったねえ」
カイがコメントする。その左右の手に握られているのは一対の奇妙な武器。一見すればとある地方の古武術で使用される打突武器兼防具である
★★★
カイの友達であり友人の中では屈指のスピードファイターであるアンジェリカの
まず遠距離に放出する事が不得手。電撃で広範囲を薙ぎ払ったり、荷電粒子砲や
次に変換が出来ない。ほとんどの
これだけ聞くと欠陥塗れ。だがその真価は別にある。それこそが《自傷・反動無効》の
当たり前の事だが自分で生み出した物でも炎に触れれば火傷をするし、電気に触れれば感電する。そして高速で何かに激突すれば自分もダメージを負う。それを無効化するのがこの
だからこそアンジェリカはカイを一時とは言え追い詰め殺す寸前まで追い込める事に成功したのだから。
☆★☆
「ま、これで先生との約束は守れたし上々」
イスルギとその一味は死屍累々となっていた。全員
カイがやった事は簡単。高速で移動し攻撃をして行動を不能にしたのだ。普通に戦ったのでは前回よりは手こずると判断だった。そのおかげでチカラを使い出してから数分もかからずに戦闘終了。
「ば、馬鹿な……。何で……」
呆然とするイスルギ。魔力でカバーしたのか比較的元気である。だが
「何でって……ねえ」
イスルギの疑問にカイは考えてみる。
(要因は数多にあるよね)
手数の差、能力の掌握具合、戦闘の場数、経験の差etc。そして――
(本気が足りない)
そう思うカイ。
イスルギ達は機械や道具に頼っただけ。肉体改造もせず、違法薬物投与もしていない。本当に殺したいなら外部から殺し屋なり傭兵なり雇えばいいのにそれすらしない。
なのでこう言ってやる事にした。
「執念が足りないよ。俺を殺したいっていうさ」
その言葉にイスルギは沈黙して俯く。暫くして――
「ハハ、ハハハ」
笑い始める。壊れたかと思うカイだったが……
「執念?あるに決まっているだろうが!」
咆えるイスルギ。そのまま立ち上がる。そして何かを出した。それは青い宝珠。
「……それは」
似たような物に見覚えがあるカイ。
「知ってるのか?なら話は早い」
そう言って彼は宝珠を翳した。
「俺に……力をよこせ!」
「やめt」
止めようとしたカイ。だが――遅かった。
青い宝珠が光る。そして――
「グ……ギャアーー!!」
ボギャボギャ、メギャ
宝珠はイスルギの体に取り込まれる。そのまま肉体が膨張していく。更にその肉塊から触手のような物が出てきて取り巻き達を取り込んでいく。使っていた武器や
「た、助k」
「イ。イスルギさんーー」
「や、やめてーー!!」
「死にたくない、死にt」
「痛い痛い痛い痛い痛い痛い」
「誰かー助けてー」
「パパー!ママー!」
悲鳴をあげながら取り込まれていく七人。そのうち声が聞こえなくなる。
「あらら……」
それを見ながらカイはどうなるのかと警戒していると――
バシャアア!
肉塊が弾けた。そしてそこから出て来たのは――怪物。
身長はカイより高く二m程。筋肉質で長い尻尾の付いた人型。体の各所に防具のように銀の装甲がありそれ以外は筋肉繊維がむき出し。腕が四本ありそれぞれに剣、槍、斧、盾が握られている。そして、頭部、胸部、両肩、両腰、両足に面のような顔がくっついていた。しかもそれは取り込まれた者達の顔だった。
「GYAAAAAA!」
咆哮を上げる怪物。これが力を求めた者の末路だった。
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