EPISODE18:「試前」
そんな訳でやって来たのは……
「し、失礼します……」
クオン=マリカである。カイがこの学園に来て初めて出来た友人。
ノックをして部屋に入って来る。中の様子を見て――
「急に呼んで済まなかった」
「別にいいけど……。時間あったから」
「そうか。なら良かった」
「うん。……ええと、どういう状況なの?」
「ああ。実は……」
戸惑うルカに説明するカイ。。
「かくかくしかじか。だから殴り合う事にした」
「まるまるうまうま。そうなんだ。(助言役だったのかな?)」
それを聞いて納得しながらも内心首を傾げていると。
「あら?貴方がシンゲツ君のご友人?」
「あ、は、はい」
「確か……クオン=マリカさんね?」
「名前覚えているんですね」
「当たり前じゃない」
カンナが近づいて話しかけて来た。それに応対するマリカ。そのまま会話を続けようとするカンナだったが……
「会長!」
「何?ワンコちゃん」
「イチコです。時間、時間」
「あ、いけないいけない」
イチコの指摘に我に返るカンナ。
余談だが、ワンコはエンドウ=イチコのあだ名である。本人はあんまり好きではない。
閑話休題。
そんな訳で観客は端に寄りカイとサクヤは模擬戦用の武器を持って向かい合う。サクヤは槍。十文字槍や
そしてカイはと言えば……
「とりあえずこんな感じで……」
「……何ですか?それ?」
模擬戦用に置かれていた幾つかの武器を適当に取って来た。剣や刀、槍、斧、鎚、盾、鎌等々。周りに適当に並べて放り投げる。そして解説する。
「うん?ああこれ?ちょっと
親友――殺人鬼であった彼女はただの殺戮なら
宿敵――戦闘狂であった彼はチカラの関係もあり多彩な武器を使いこなす。状況に応じて多彩な武器を使い分けて戦う。広く浅くでは一点を極めた者に負けるのが常だが彼は別。戦闘の申し子、戦闘の天才と言われる程の戦闘力を持っているからこそ数多の相手を葬って来た。
「
カイが普段と言うには理由がある。この二人は相手が強者と認めた場合、親友であれば真の武器を抜き、宿敵であれば一つに絞って戦うようになる。
余談だが、悪友は刀剣以外は使わないし使えない。そう言う所でも仲が悪い二人である。
そんなカイの言い方にサクヤは眼を細める。
「ほう。私相手では本当の
「さあね。それにそっちだって
「模擬戦で使うような物ではないです」
「俺もそう言う事だ。それに――抜かせてみたいなら抜かせてみせろ」
「いいでしょう。その傲慢叩き潰してあげましょう」
二人で審判――カンナに目を移す。二人から目線を送られたカンナは意味を察して告げる。
「じゃあ始m「ふう、間に合った」
始めようとすると部屋に新たな観戦者が現れた。それは――灰色の髪をツーブロックにして両目を緑の布で覆い、両腰には
「「先生!」」
「「「イブキ先生!」」
この学園の教師にしてカイとルカの担任であるイブキ=イオリだった。因みに彼はこの学園でも最強格と言われており学内では結構有名である。そんな彼にカイは話しかける。
「先生何の用ですか?」
「いやね、この試合が気になってさ。だから来た訳」
「……ええ」
「それに一応……」
周りを見渡し続ける。
「シンゲツ君の応援って事で。宜しく」
「クオンだけで十分なんですけど……」
この学園の教師ならこういう部屋の予約状況を見れる。だからこそ来たらしい。
「……まあ一人位増えても」
「もう今更ですね」
カイとサクヤは溜息を吐く。
そういう訳で試合再開。
「じゃあルールのおさらいです。危険な術技や後遺症が残るモノも禁止。そして勝ち負けは降参か気絶等で決めます」
そうしてカンナは二人に目配せする。
「それじゃあ――試合開始!」
試合が始まったものの、二人は動かない。
カイは腕を下げ、サクヤは槍を構えている。
「……構えないのですか?」
「常在戦場を心掛けているから」
どんな状況でも戦えるようにしている。それに――
「俺は相手の出方を伺うタイプだから」
「……そうですか」
「とは言え――このままじゃ埒が明かないから」
そう言いながら歩く。そのついでに器用に近くにあった斧を足で引っ掛け右手に持つ。
「俺から行く!」
そのままカイはサクヤに接近し斧を振り下ろした。
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