EPISODE17:「五人」

 暫くしてサクヤが端末を出して中を見る。そして立ち上がる。


「行きましょう」

「……もう取れたの?」

「そのようです」


 そう言う訳で移動を開始する二人。

 おかしいなと内心二人は思っていた。学園内には模擬戦等で使える部屋は幾つかあるが放課後は予約が結構ある。だからこそ疑問に思っていた。


(何かあるかもな……)

(どうなっているのでしょう?)


 そんな事を考えている内に模擬戦に使う部屋に到着。扉を開けると――


「待っていたわよぉ~」


 バタリ


 すぐさまサクヤは扉を閉める。


「……帰りましょう」

「……今誰k」

「帰りましょう!」

「お、おう」


 サクヤの気配に押され了承してしまうカイだったが――


 ガチャリ


「あらぁ、失礼じゃな~い?人の顔見て逃げようとするだなんてぇ~」


 こちらから出て来た。そこにいたのは――


筋肉マッスル……)


 大柄の筋骨隆々とした男性だった。桃色の髪の毛をパイナップルのようにしており、制服がぱっつんぱっつんだった。


「何でいるのですか……ムラミさん」


 そんな彼(?)にサクヤが溜息を吐きながら尋ねる。彼(?)はクマイ=ムラミ。生徒会の広報であり三年生である。


「あらぁ?アタシがいちゃいけないのぉ~?」

「……いえ、その……」

「まあアタシだけじゃないけどねぇ~」

「……予想的中しているじゃないですか……」


 中の様子にサクヤは手で顔を覆う。そこにはムラミ以外に四人の人間がいた。……カイの予想大当たりである。


「やっほー!サクヤ!」


 サクヤに声を掛けたのはツインテールにした蒼い髪に糸目をした少女。手には足が十二本ある巨大な蜘蛛を乗せていた。


「ナミ……」

「いやあ、ゴメンゴメン。気になってさ」


 彼女がキシュウ=ナミ。蟲を使うテイマー系の魔導士(魔導調教士とでも言うべきか)の二年生。因みにサクヤの友人でもある。


「会長と副会長も……何しているんですか?」

「だって今話題の人とサクヤちゃんが何か話していたんだもの!気になるでしょう!」

「そう言う事だ」


 ポニーテールにした赤毛の頭部にカウボーイハットを被っている少女と金髪碧眼に日本刀を持った長身の少年が口々に答える。

 少女がダテ=カンナで生徒会の会長。少年がサドガサキ=ジョウキチで生徒会の副会長。どちらも三年生である。


「……すみません」


 そんなサクヤに申し訳なさそうにしているのが一人だけいた。短めの銀髪に獣耳と尻尾を持つ少女であった。彼女が一年にして生徒会の庶務であるエンドウ=イチコ。

 因みに生徒会は成績優秀者でなければ入れない。一年で所属しているという事は優秀な魔導士である証である。


 そんなイチコにサクヤは首を横に振る。


「いいんです。どうせ他の面々に引っ張られたんでしょう?」

「止めたんですけど……」

「……はあ」


 溜息を吐くサクヤ。


「皆さん、帰ってください。これはカイと私の問題ですので」

「いいじゃないのぉ~!減るもんじゃないしぃ~」

「そうだそうだ!」

「減ります!何かが!」


 サクヤとムラミとナミの言い争いを眺めてカイはこめかみを掻く。


(こうなった場合……手札は限られるな)


 サクヤだけなら色々と出せた。だが観戦者が多い中ではやはり使える物は限られる。それに手札は秘めて置くのがカイの戦法。


(親友。また借りる事になる)


 心の中で友人に呼びかけていると――


「ええと……シンゲツ君よね?」

「はい。そうです。覚えてるんですね」

「当たり前じゃない。全校生徒記憶しているわよ!」


 胸を張るカンナ。……あんまり凹凸がない。


「……何か今失礼な事考えなかった?」

「いえ、別に。生徒会長」

「そんな硬くならないでいいわよ」


 敬語を使うカイに苦笑するカンナ。


「所で……どう?私達は邪魔かしら?」

「……別にどちらでも」


 本来なら見られない方がありがたいがこう答えるカイ。……と言うかカンナの圧が凄い。そう言うしかない。とは言えこのままの状況も癪なので――


「サクヤ先輩……」

「……はい?」


 言い争いをしているサクヤに近づき話しかけるカイ。


「もう諦めるしかない」

「……ええそうでしょうね」


 今まで一番深い溜息を吐くサクヤ。……後ろでムラミとナミがハイタッチしている(笑)。


「だからさ……」


 あの五人はサクヤの知り合い。ならば――


「こっちも観客呼んでもいい?」

「はい!?」


 変な声を出すサクヤ。


「だって其方さんは全員サクヤ先輩の応援団じゃん」

「違いますよ!?」

「でも似たようなものでしょう?」

「そう……なのでしょうか……?」


 首を傾げるサクヤは――


「頑張れサクヤー!」

「応援しているわよぉ~」

「黙らっしゃい!」


 茶々を入れるナミとムラミに咆える。


「そう言う訳で良いか?」

「……ええまあ。今更増えても変わりませんし」

「そうか」

「それで?一体誰を呼ぶのですか?」

「友人」


 そう言うとカイは端末を出して昼に聞いたばかりの番号にメッセージを入れた。

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