第Ⅻ話:「ステゴロのち、大火力」
そして始まったのは――殴り合い。互いの拳足をぶつけ合う。
カイがチカラを受け継いだ友の一人である盟友――彼女は素手で戦う。だからこそカイは徒手空拳で戦う時は彼女のようにパンチやキックを主体として戦う。投げ技や固め技、関節技は使わず――出来ないわけではない――ガンガン攻める。それらの打撃を彼女は極めており、その気になれば零距離や至近距離でも威力を下げずに打てる。『武器である四肢』と『彼女の持っている能力』を合わせたその戦闘力は凄まじく相手を時に殴殺、蹴殺、消失させた。
オノダは武芸百般極めており、様々な武器を使うが素手でも恐ろしく強い。徒手空拳で戦う時は投げ技、固め技、当て身技を使うが、今はカイに合わせ当て身技で戦っている。そして一番得意なのは守りに徹する時。
だからこそカイが攻めオノダが守る。カイの拳足をオノダはいなし当て身を叩きこむ。その戦いの中、オノダが疑問に思っていた。
(……おかしい。こちらの攻撃の芯がズラされる。なのに向こうは上手く打ち込んでくる)
カイに打撃をカウンターで叩き込もうとすると攻撃がズラされ受け流される。逆にカイの攻撃はこちらの隙に上手く付け込まれる。何かしら仕組みがありそうだと思う。それと同時に嬉しくも思っていた。
(完全に戦闘技術がかなり上がってる。……と言うかそれどころじゃない。もはや別人レベルだな……)
カイには戦いの才能はなかった。だが先程の酒盛り(?)で友人達から強さと能力だけでなく、経験や技量、知識も受け継いだと聞いていた。だからこそ今の状況にそこまで驚きはない。だがそれらにカイは振り回されいない。それどころか自身の血肉に変えていた。
(沢山戦って来たんだろうな……)
カイの攻撃を受ければわかる。彼は数多の修羅場を潜り勝利したのだろう。だからここまで自分と渡り合えている。ならば――
「フン!」
「うお!?」
オノダは攻め方を変える。拳を打ち込むカイの腕を取り投げる。急に戦法がガラリ変わったので投げられてしまったもののすぐに態勢を整えるカイ。そのまま両者間合いを取り仕切り直し。
「見事だ。よくぞここまで鍛え上げた。褒めてやる」
「……褒めないでください。所詮貰い物です」
謙遜する。戦友の教えはあってもやはり卑下してしまうカイ。そんな彼にオノダは首を横に振る。
「それでもだ。振り回されてねえからな。誇れ……カイ」
口元を歪めるオノダ。笑っている様にも何かを狙っている様にも見える。そして彼は真顔に戻り告げる。
「このままじゃ埒が明かねえ。だから――変更だ」
弓を射るかのように右拳を引いて構える。
「お互い高火力をぶつけ合う。それで
「わかりました」
このまま殴り合いも悪くはないが明日も学校なので早めに切り上げたいカイはオノダの提案を受ける。
「――心友よ」
その言葉と共にカイの右手に現れたのは女性物の日傘。張られている布はまるで星空のようであり、石突が銃口のようになっている。これが彼の心友のチカラ。火力と殲滅力であれば断トツでトップであった。本来なら周りを巻き込む為あまり使えないが今回は別である。
(さて……どれを使うか……)
(どうしようか……)
お互い使う技について考える。外に影響は出ない異空間とは言え実際どうなるかわからない技を二人とも持っている。
(よし決めた)
(これにするか……)
お互い同時に選択。そして――
オノダの右拳が光り輝く。突き出された拳から光が放たれる。
――〈ブラフマシラーストラ〉
カイの日傘の先端に光が灯る。日傘の先端から放たれたのは灼熱の一閃。
――《ライジング・サン》
両者の一撃はぶつかり合いせめぎ合う。そして――大爆発を起こした。
大火力激突後少し会話をして異空間から二人は帰還した。二人とも大きな怪我はないが服が少し焦げていた。……それくらいで済んだのが奇跡である。
「じゃあ俺は帰る」
「送りましょうか?」
「……いらねえよ」
カイの冗談に苦笑するオノダ。
そして玄関ではなく窓から出ようとするオノダは問いかける。
「カイ」
「はい師s……じゃないオノダさん」
「……まあいい。で?これからお前はどうすんだ?」
「……」
「はっきり言うぞ。今のお前はこの世界でも屈指の強者だ。恐らく勝てる奴はそうはいない。そのチカラで何をする?」
「そんなの決まってます」
即答するカイ。
「手に届く範囲のモノを守ります。そして――幸せになります」
友人達の言った通りと付け加える。そんなカイにオノダはふっと笑い……
「そうか」
そしてふと何かを思いついた顔になり――
「じゃあこれをやる」
そう言うとオノダは三つの光球を出す。それがカイに吸い込まれる。
「……良いんですか?」
「ああ。教え子が立派になった祝いみたいな物さ」
「ありがとうございます。じゃあついでにもう一つ良いですか?」
「……何だ?」
カイの願いにオノダは納得して快く了承。そして――
「じゃあな――■■■■=■■■」
「さようなら――■■■■■■■」
お互い『真の名前』を呼び合いオノダは外へ出た。
それを見送ったカイはふと視線を上げて空を見る。
オノダは建物を足場に跳びながら空を見る。
そして――
「「これから……どうなるか」」
二人の異口同音の呟きが空気中に消えた。
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