第Ⅶ話:「試合という蹂躙」
そして――
「(まあいいか。)試合……開s「「「「「死ねー!」」」」」
試合開始の合図の途中で(打ち合わせの通り)取り巻きの五人の魔導術士が攻撃を放つ。完全フライングであるが半分グルみたいなものなので審判は止めない。
後衛達が選んだのは火球、電撃、氷弾の術技。火、雷、氷は『攻撃三属性』とも呼ばれ攻撃力が高いので好まれる。これらは基本的な物だが威力は高い。それらがカイを襲い、着弾。粉塵で辺りが見えなくなる。普通であればオーバーキル。試合終了。
だが……。
「やったか?」
「おいそr」
「それはフラグだよ?」
声がした。驚きながら視線を前方へ向ける。
粉塵が晴れていく、そこにいたのは……
「……こういう時何て言うんだっけ?ああそうだ――温いぞ?そんなものか?」
シンゲツ=カイだった。しかも傷一つどころか制服に汚れすらない。無傷で防ぎ切った。……正確には防ぐ必要がない。今の彼に攻撃三属性は通用しないどころか塩を送るようなもの。……相棒がこれを見ていたら相手に大笑いしているだろう。
「「「「「「!?」」」」」」
驚きのあまりイスルギとその取り巻きに隙が生まれる。
そこをカイは見逃さない。見逃すはずがない。
「隙だらけだよ?」
イスルギの取り巻きの一人である二属性の魔導術士の一人がその声に目線を落とす。そこにはカイがいた。攻撃の間際に体勢を落とし相手の後衛の所まで純粋な体術で高速移動したのである。因みに魔力は一切使っていない。
カイは態勢を低くして右拳を引いている。
「さようなら」
掌底が取り巻きの一人の顎に炸裂。意識を刈り取る。
そのまま両手でそれぞれ別の相手を掴み、顔と顔を激突させ二人をノックダウン。
残り六人。
そうしたところでやっとイスルギとその取り巻きがカイがいることに気づく。
「な!?いつからそこに!?」
「いいからやっちまえ!」
イスルギの声に剣と槍を持った前衛系の魔導戦士――魔導剣士と魔導槍士が反応。
「死ねェー!」
「これでも喰らえ!」
魔力によって強化された武技がカイに挟み込むように襲い掛かるが…
「連携が甘い」
攻撃と攻撃の隙間に入り込み攻撃を透かす。
攻撃が当たらず体勢が崩れた剣士の鳩尾を殴って、槍使いを蹴っ飛ばし戦闘不能にする。
残り四人。
「こういう時は……確かこうだったな」
目まぐるしい展開に動けずにいる盾使いの足を掴み武器替わりにする。
「えい」
気の抜けた声と共にそのまま残った相手を薙ぎ払う。
親友がよく使っていた手法を真似る。
彼女は生業(?)的に大人数と戦う時が多く、その時によく使っていたのが人間の手足を持ってぶん回す人間武器。気分によっては二刀流となる。
とは言え人間は武器ではないのであくまでも雑魚が沢山の時の専用技である。相手が強者であると認めた場合は自身の
本人曰く――
『相手も殺せるし、武器にした奴も死ぬ。一石二鳥』
との事。
場合によってはある程度加工して使うのだがそんな時間はないうえ、それをすると後々が面倒。だからそのまま振るう。
「おお!?」
「げひ!?」
「ばべ!?」
「うお!?」
二人は戦闘不能になるも、イスルギは
因みに武器にした奴は振り回した衝撃で意識を失くしている。
残り一人。
あっという間に一人になったイスルギは唖然としていたが武器――取り巻きの一人を持っているカイを見て叫ぶ。
「お、お前、何をした!?」
「何って……。戦闘」
武器(人間)を放り投げて告げる。因みに気絶している。手加減をして振ったからこそこれで済んだ。……もしこれが親友が本気で振れば恐らく一振りで死んでいただろう。
だがカイトのその説明にイスルギは納得しない。
「そういう意味じゃねえ!お前……一体何をやった?」
あまりにも彼は強くなりすぎだった。
誰がどう見てもまともな方法をやったとは思えない。
その問いにカイは真顔になって暫く沈黙。
(そもそもまだチカラは使ってないけど)
確かにカイはチカラを手に入れた。だがこの戦いではまだ使っていない。というか使う程相手が強くない。……まあ副産物は少し使ったが。特に最初の方の攻撃で。
そして何と言うべきかと少し考え口を開く。
「受け継いだのさ」
その言葉には万感の思いが込められていた。
だがそんな説明でイスルギは納得できない。更に問い詰めようとするが。
「ふざk「こっちからもいいか?」
その問いを潰して問いかけるカイ。
「お前さ――何で取り巻きを呼んだの?」
おそらくカイが異世界で強化をしなければ、一対一でも九割九分イスルギは勝てただろう。
だがそれなのにわざわざ取り巻き+αを呼んだうえ、ルールは降参が出来ないと完全にこちらの不利。
つまりは――
「ああ皆まで言うな。俺を甚振るためだろう?」
そして事故に見せかけて殺せれば御の字と言ったところだろう。
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