第2章 最後の物語
第55話 最強
神は理解できないことがあった。それは、英雄や4強が諦めることなく神に挑戦してくることである。目障りとして判断した神は彼らを封印したが、事あるごとに封印を破り、神に挑戦してきた。神は、その全てを破ったが、彼らは決して止まる事は無かった。
彼らは強く、神の力を持ってしても対抗手段は圧倒的な物量で押し潰す以外には方法は無かった。
彼らの記憶や思い、心は核に宿ったものである。そして、核は世界を構成する最小単位の物質であり、それ以上の分解は神にも不可能であった。故に、いくら彼らを倒そうとも、殺そうとも、再び無の核に戻るだけであり、そして何かの拍子に再び生を受けることが発生してしまった。
神は彼らの行動を制限するため、彼らの心が宿った核を拘束することで封印としたが、それでさえ完全では無かった。
神は英雄や4強、反逆者達の相手をするのに飽きていた。彼らに対抗するため[10の世界の敵]で勇者達と戦わせた”最後の敵”のような者達を作り出していた。”最後の敵”は強かった。その肉体も魔力も知能など、およそ才能と呼ばれる部分に関しては全てにおいて秀でていた。しかし、”最後の敵”の力を持ってしても英雄や4強に対抗することは出来なかった。いや、一時的には対抗出来たかもしれないが、最終的に英雄達に敗れ去ってしまった。
神は考えた。英雄等に対抗する者はどのような者かと。神は好奇心を抑えることが出来ないでいた。英雄達に対抗する最強たる者を作ることを。
「ふふふ、そうよ、私は神!出来ないことは何もないわ・・・・あいつらを超える者を作ってみせましょう!!」
神は”最強たる者”を作ることに没頭した。才能や長寿命はもちろんのこと、精神や心の強さ、目的を達成させる思いの強さ、それら全てを注ぎ込んだ者を作り出そうとした。それは、神が今まで自分に挑戦してきた者達の特徴を詰め合わせたような形であった。
「ふふふ、さぁ!生まれなさい!!貴方は最強!誰よりも強く、全ての者を超える者、最も高い山の頂まで登るのよ!」
最強の要素を合わせた無の核が出来上がった。そして、その者が生き、成長する世界を創り出し、世界に解き放った。
しかし、神の期待に反して、最強たる者は弱かった。もはや、最強たる者と呼ぶことすらおこがましい程である。
もちろん、神もすぐに結論を出したわけではない。その者が幼き頃は大目に見た。しかし、何年も何十年も見守ったが、その者はそれほど強くならなかった。無能であった、というわけではない。平均以上の才能は持っていたと思う。しかし、それだけであった。
その者は、時には見苦しく逃げまどい、時々に全てを失い、そして散々に敗北を重ねた。ただ、ぎりぎりな時はあったが死ぬことは無く、その長い長い寿命を活用していた。
神は途中で飽きてしまい、見るのを止めてしまった。もっと才能があり、叡智に富み、才気溢れるものはたくさんいた。その者らに比べて、はるかに劣る存在に見えたためである。一応、自らが丹精込めて作った者である。その生が終えるまでは世界を維持することに決めた。
それから、長い時が過ぎ去った。その者は自らが生まれた意味を理解していた。そして、その者は多くの事を経験し、多く事を成し、多くの仲間や部下を持った。しかし、これでは目的を達することは出来ないことを理解していた。
ある時、その者は炎に包まれた町にいた。
「・・・・・・・まさか、一対一で我が弟子を討つものがいるとは。長く生きているが、やはりこの世界は広いな」
炎の中で感慨に耽っていると、近くに異様な力を放つものがいることに気がついた。燃え崩れ落ちそうな家の中に、赤ん坊が取り残されていることに気がついた。その赤ん坊に近づき、触れた瞬間に膨大な量の記憶や思いが流れ込んできたのである。
「ほーーーー、これは・・・・・。ふふふ・・・・ふぁふふふふふふっふぁぁぁぁぁ!」
その者は、目的を達成するための方法がわかったのである。
「はぁぁはぁははははは!そうだ!無駄ではなかったのだ!お前の、お前達がやってきたことには意味があったのだ!!いや・・・・・俺が必ず意味を持たせてやる!!」
その者は赤ん坊を抱きかかえ、そして闇の中に消えていった。
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