第52話 反逆者達の記憶②

 勇者は[10の世界の敵]の時の状況を探るべく、さらに深く核を覗き込んだ。


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[10の世界の敵]

 集められた世界の敵の内、1~9番目の者は全て神への反逆者達であった。そして彼らには神から伝えられていた事がある。


『もし、貴方達が勇者を殺すことが出来たら、この世界をあと数百年、いえ数千年は維持してあげるわ。でも、貴方達が敗れたら即座に世界を終焉させる』


 それは神からの悪魔のささやきであった。反逆者達も世界に産み落とされ、たくさんの大切なものを持っていたのである。神に反逆して勇者を殺さなければ世界は終焉を迎えてしまう。神に協力して勇者を殺せば世界は生きながらえることが可能になる。不本意な二者択一であった


 この内容に対して1~5番目の敵は神に協力し、勇者を倒すべく積極的な行動に出た。しかし、6~9番目の敵、すなわち4強は神への協力を拒んだ。仕方なく神は強制的に4強を動かしたものの、その力は本来の力からはかけ離れた状態であった。

「あれで弱体化していたのかよ・・・・・・・恐ろしいやつらだぜ」


 世界の敵として覚醒した際は、以前の記憶を取り戻していた。9番目の敵であった英雄は最後の瞬間に本来の自分を取り戻し、勇者の核に反逆者達の記憶を刻み込んだのである。


「あの馬鹿、最後の最後でやっとかよ・・・・・」


 その後、4強は神によって復活させられたが、賢き者の力によって全員が本来の自分を取り戻すことに成功したのである。そして、勇者と共に神に挑戦したが、敗れ去った。この事実は勇者も把握していることである。しかし、認識自体が大きく異なっていることに気がついた。


「あいつらは・・・・・・勝つつもりが・・・・・無かった?」


 4強は神に挑戦はした。4強は確かに強かった。しかし、その力の結集させようとも[伝説の世界]の戦力には遠く及ばなかったのである。そんな中で彼らがしたのは以前に試した打倒方法の巻きなおしでしかなかった。


「なんでそんな無駄なことを・・・・・あいつらならもっと方法があったんじゃないのか?」


 彼らは、自分達には神を倒す駒が足りていない事に気づいていたのである。多くの事を試した4強は1つの結論に行きついてた。無限の宝箱を何とかしなければ勝機は無い、ということである。そして、無限の宝箱を破壊ないし無効化できる者を探していた。そして、その人物を見つけたのである。


「え・・・・・・・・・・これって・・・・・・俺の事か??」


 その人物とは勇者の事であった。そして、勇者に神を打倒する術を見つけてもらうために[10の世界の敵]の時に、反逆者達の記憶を勇者の核に刻み込んだのである。


「・・・・・・馬鹿な。・・・・・俺にはそんな力も道具も方法も知らない」


 勇者は絶望に暮れていた。希望であった者達の最後の策が自分であったのである。無力な自分は神と戦うことすらできていない。そんな自分が神を倒す術を知っているなど到底受け入れられる内容ではなかった。


「他に・・・・・・・・・・他に!!あるはずだ!!何か、何か!これだけの記憶があるんだ!何か!」


 勇者は、その後も大量の記憶を紐解くことに専念した。


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