第51話 反逆者達の記憶

 勇者は自分の核の中に存在した神の反逆者達の記憶を読み解いていた。勇者は、最も神の打倒に迫った世界を探し出してヒントを得ることを考えた。


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[伝説の世界]

 神への反逆者達の中で[伝説の世界]、そう呼ばれている世界があった。それは初めて神に反逆する者が現れた世界である。

 過去にも神が気まぐれによっって世界を終焉させてことは多数存在したが、それらの世界では神に反逆することなく、いや神の存在すら確認することなく世界は終焉していた。

「まったく、神はどれだけの世界を気まぐれ終わらせたんだよ!」


 その世界は3人の英雄によって統治されていた世界である。3人の力は拮抗しており、お互いが牽制し合うことで、世界は平和と平穏を享受していた。3人は互いを良き好敵手と認識しており、力が拮抗することもやぶさかではなかった。3人の才能は軍事に留まらず、政治、経済、科学の全ての分野で発揮されていた。そのため、世界は栄耀栄華とも言うべき発展を遂げていた。


 しかし、神はその世界に飽きていた。3人の力が拮抗するまでの世界は、多数の国家が乱立しており、多くの血が流されていた。世界は憎悪で満たされていたのである。その世界を3人は見事に収めることに成功すると共に、互いに力が拮抗したことで大戦や腐敗が発生しにくい環境へと変わっていた。

 平穏に飽きた神は世界を終焉させること決めた。しかし、その終焉に対して3人は対抗したのである。しかも、3人は協力することで世界全ての力を結集して神に立ち向かったのである。


 英雄の1人は[10の世界の敵]で共に神と戦ったジンであった。3人の英雄達の力は凄まじいものであった。多くの世界で力を積み上げた勇者の力では足元にも及ばず、ジン自身も[10の世界の敵]の時よりも強い力を持っていたのである。

「あの野郎・・・・・こんなに強かったのかよ。まったく、幼馴染ながら驚かされるぜ」


 多くの世界で力を積み上げようとも、当事者の力の下地は生きた世界のものが基本となる。つまり、高い才能が互いに切磋琢磨し、極限まで高められた[伝説の世界]のジンの方が強いのであった。他の2人の英雄も勝るとも劣らない力を持っていたのである。しかも、誰かが強くなれば、それに引きずられるように強くなっていく始末であった。


 3人の英雄は配下の者を率いて戦った。戦い続けた。神が準備した終焉をもたらす怪物達では英雄達に歯が立たなかった。英雄達は神が準備した障害の全てを打ち破り、神の領域まで到達して直接対決まで持ち込んだのである。


 英雄の部下である多くの強者達が神との戦いに参加した。その力は物量で押してくる神に対して、対抗している言えるほどであった。


 英雄達も馬鹿ではなく、神の無限なまでの物量に対して原因となるものつきとめていた。それは神が保有する宝箱である。反逆者達は[無限の宝箱]と呼んでいるものである。その名の通り、無限なまでの無の核を生み出す宝箱であった。


 英雄達は無限の宝箱に対抗する方法を種々試していた。それは、物量によって宝箱の中身を消費尽くすことや、宝箱を破壊すること、宝箱を奪うこと、宝箱を閉じること、無の核の流れを止めること、無の核を操作を封じさせること、一度に全ての神を倒すこと、その他に考えうる全ての事を試していた。


 しかし、その全てが失敗に終わった。いや、それらの手法では意味が無いことがわかったという方が正しい。多くのことを試し、挑戦し、考えた。


 英雄達は永遠と呼べるほどの長い時間を戦い続けていた。配下の者が、国民の全てが死に絶えても3人は戦い続けた。しかし、その無限なまでの力を肉体が支えきれなくなり、3人の体は崩壊し神に敗れたのである。


 この戦いの記憶は、参加した者達の核に深く刻み込まれたことで、勇者の時と同じように記憶を取り戻す者が後の世界で現れるようになった。そして、[伝説の世界]と同様に神に反逆する者が続々と現れるようになった。3人の英雄の中でジンだけが、その後も神に反逆を続けている。他の2人は神への挑戦を諦めてしまった。


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 勇者は更に核に眠っている記憶を探り出した。それは現状の神と反逆者達の関係である。


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[4強]

 神への反逆者達の中で主軸を占めている者が4人存在する。[伝説の世界]で神に最も迫った”英雄”、その智謀知略によって神を翻弄する”賢き者”、圧倒的な力を持つ”強き者”、運命に愛された”豪運の者”である。


 4人は反逆者達から[4強]と呼ばれており、神を打倒する者達であると目されている。彼らが神を打倒する目的は異なるが、神を打倒することに対して協力関係が築かれていた。人の心と記憶は核に宿っている。その事実に彼らが気づくのに時間が掛からなかった。人が死に無の核の状態になっても、記憶や心は維持されるものであった。[4強]は互いに経験を交換することで、ついには無の核に戻った状態でも互いに意思疎通が出来る程までになっていた。


 [4強]や他の反逆者達に対して興味をもった神は、彼らに世界の敵としての役目を与え、憎しみの全てを受け止めさせることで、その心を弄ぶことを目論んだ。心と記憶と肉体を意図的に操ることで、その役目を実施させようとしたのである。それが先の[10の世界の敵]の世界であった。しかし、[4強]も黙って役目を演じる程の馬鹿ではなかった。

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