第44話 無限の

 勇者達と神との戦いは激しさを増すばかりであった。

「ふぁっふぁっふぁっふぁっふぁっふぁっふぁっふぁっふぁっふぁっふぁっふぁっふぁっふぁっふぁっふぁっふぁっふぁっふぁっふぁっふぁっふぁ!!!」

 ムーは宙を自由自在に動き回り、次々と神を打倒していった。それは、光の線の様な魔法や、爆発、雷撃、はたまた時空や重力を歪めることで神を押し潰す攻撃もしていた。時には空から数多の光が舞い降りて焼き尽くし、時には巨大な衝撃波によって神をバラバラに砕いていった。

 神も同様の魔法を放とうとしていたが、放つ前にムーが無効化または放たれたとしても効果がない様子であった。神は剣や槍のような物を携え、接近戦なども挑んでいたが、近づく前に魔法によって消されるか、近づけたとしても神速の剣によって粉々にされる始末であった。


「・・・・・・・・・・・・・・・」

 巨人は巨大な剣を目にも止まらぬ速さで振り回し、虫を叩き落とすように神を倒していった。神は巨人の死角から攻撃を加えていたが、かすり傷が付く程度であり、致命傷には程遠い状況であった。巨人は神が集結して攻撃しようとするのを、試練の扉で見せた攻撃を放つことで一掃していった。巨人が放つ攻撃によって神の領域は失われているようにも見えた。


「はあぁぁぁ!」

「おおおおおお!」

 ジンやリオは、ムー達程の派手さは無いものの、リオは確実に剣技にて神を倒していき、ジンは剣技と魔法の組み合わせによって次々と神を撃破していった。


「おらららぁぁぁぁ!!!!」

 勇者も他の者と同じように神に挑んでいた。

「・・・・・・ほい」

「ぐっ、いったたぁぁ!!」

 しかし、勇者は1体の神にすら歯が立たないでいた。勇者は神の攻撃を受けてしまい、地面に転がってしまった。

「・・・・・・貴方、ほんとうーーーーに弱いわね。少し同情するわ」

「・・・・・このやろう、うるせぇな!」

「やはり貴方は地上に残るべきだったのよ!そうだわ!そうよ!何をあいつらは考えているのかしら??」

「ごちゃごちゃとーーー、へ!しかし、貴様は随分余裕だな!!!このままいけば、ジン達が貴様ら全員を倒すのも時間の問題だぞ!!」

 勇者は転がった状態で強気に神に言い放った。しかし、神の様子は全く焦っているように見えなかった。

「そうねーーーー、今回はなかなかのメンバーね。これは苦戦も仕方ないかしら」

「あ?何言ってやがる!!ピンチ過ぎて気でも狂ったか?」

「まぁ、何も知らない貴方じゃあ、この状況が有利に見えても仕方ないわね。ちょっとだけ見せてあげるは、神の力をね」

 神は手を前に差し出すと、そこに宝箱が現れた。そして、神はその宝箱を開けた。


 神が宝箱を開けた瞬間から、神の動きが速く、力は強く、魔法は大きくなった。しかし、その全てをムーや巨人は跳ね除けると、攻撃を勇者の近くにいる宝箱を持った神に集中させた。強大な力が神に降り注ぎ、それは勇者諸共消し去るものであった。ジンは攻撃が衝突するぎりぎりのタイミングで勇者を抱え、攻撃の到達点が離脱した。


「うぉぉぉ!」

「大丈夫か?」

「ああ・・・・・大丈夫だ。しかし、あいつら神と一緒に消し去るつもりだったな!!」

「・・・・・・・そうなれば、あいつらも良かったと思っているだろうな」

「ああん?どういう・・・って!!」

 神はムーや巨人の全ての攻撃を受け止めていた。そして、全ての攻撃を消し飛ばした。

「まじかよ!!あれで倒せないのか・・・・・」

「ああ、そのようだな」

「・・・・・・本当に倒せるのかよ・・・・あんなやつ」

「・・・・・・・・・・次が来るぞ、構えろ!!」

「くそーーーーーー!」

 勇者達は次々に襲ってくる神の相手に多くの時間を費やしていた。




 城に撤退したレイナ達の戦況は絶望的であった。既に街の壁は破られ街中に敵が侵入していた。かろうじて残っていた兵士を結集し、城を守っていたが門が破られるのも時間の問題であった。


「ティア!ティア!起きて!ティア!」

 ティアは城内で治療を受けたが、傷は深く目を覚ましていたなかった。

「大丈夫です、助かります。なので落ち着いてください」

 治療に当たっていた短剣の者がレイナを励ましていた。

「そう・・・・ありがとう」

 ティアの呼吸は安定しており、このまま安静な状態を保てば確かに助かる様子であった。しかし、それを許してくれる状況下ではなかった。


 門は破られ敵が城内に侵入してきた。城内にいた兵士達も応戦したが既に戦える状態の者はほとんど残っておらず、次々に倒れていった。レイナ達のもとにも仮面の者が現れていた。

「はっはっはっはーーーー!こんなところにいましたかーーーー!探しまーーーしたよ!」

「く!!」

 仮面の者とレイナやティアの間に短剣の者は立ちふさがった。

「おやおやーーーー、まだわからないのですか?貴方達では私にかてなーーーいということを」

「・・・・・・ええ、わかっていますよ。今の私では貴方に・・・・・勝てない」

「だったら、そこをどいてくださーーーーい!貴方には用はありません!」

「それでも、それでも!!今から貴方がすることを見過ごすことは絶対に出来ない!!」

 短剣の者は仮面の者の方を向きながらレイナに告げた。

「ここは私が防ぎます、早くその方を連れて脱出してください!」

「でも!!」

「・・・・・大丈夫です。私は負けません、負けるわけにはいきません!!」

「ほざくな!!雑兵風情が!!!」

 仮面の者と短剣の者の互いの武器が激しくぶつかり合った。

「貴方に、貴方にだけはこの人達を殺させない!!!絶対に!!!!絶対に殺させてなるものかーーーー!!!」

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