第40話 強き者

 勇者達はムーの力によってある場所に来ていた。そこは、天空に浮かぶ大地のようであり、勇者達が立っている大地以外にも同様なものが、いくつか遠くに見られた。そして、勇者達の近くには巨人の大きさ位の扉が存在していた。


「ここはどこだ?!」

「ここは、神の領域と呼ばれている場所だ」

「神の領域??じゃあ、ここにあいつがいるのか?」

「いや、しばらく先のところに奴はいるだろう」

「ん?なら、なんでこんなところに来たんだ?」

「ここが入口だからだ。俺やムーの力を持ってしても、ここから始めるほかに手はない」

「なんだよーーー。ぴゅぴゅっと、あいつの所には行けないのかーーー。それで間に合うのか?」

「ごちゃごちゃうるさい人ですねーー。貴方だけ、ここから突き落としますよ!」

 勇者達が話をしていると、何処からともなく神の声が聞こえてきた。


『ようこそ、お出で下さいました!!ではでは、他の者と同じく4つの試練を突破して貰いましょうか!!』

「なんだとーー?試練だ??時間がないのに!!」

『皆さんには、目の前の扉から順番に試練を!そう、強大な敵を倒して貰います!!頑張って、早く倒さないとーーーー。地上が滅んじゃうかもね!』

「くそ!どこにいやがる?!出てこいや!!」

『ではでは、頑張ってねーーー!』

「おい!!」

「無駄だ、コール。奴は、ここにはいない」

「ち!じゃあ、すぐに向かおうぜ!!」

「ふぁっふぁっふぁ!これだから力も知恵も無い者は困る」

「なんだと?!じゃあ、どうするんだ?」

「とりあえず、こっちに来い」

「ああ??」

「それじゃあ、頼む。”強き者”よ」

 ジンが巨人に声を掛けると、巨人は扉に体を向けた。


「いったい何をするんだ?」

「まぁ、見てろ」

 巨人は何処からともなく巨大な剣を召喚させた。いや、創生したという方が近しい現象であった。そして、通常では目にすることができない程の無の核が剣を包み込んだ。それは剣自身が全て無の核で出来ているのではないか、という程の量であり、同時に巨人の周りにも莫大な無の核が発生していた。


「おいおい、これは大丈夫なのか?!こんなに無の核があふれて、もし何かにでも変わったら!!」

「ああ、そうだな。とんでもないことが起こるだろう」

「落ち着いている場合か!俺達も一緒に吹き飛ぶだろ!!」

「直接向けらているわけではないんだ。その程度を乗り切れなければ、あいつには到底及ぶまい」

「俺は無理だよ!!!あいつにも会っていないのに死にたくないよ!!」

「ふぅ、仕方ない。俺の近くにいろ」

 勇者はジンの後ろに隠れるように構えた。


 巨人は準備ができると剣を扉に向かって振り落とした。それは、強大な光が全てを包み込むようであり、莫大な力が扉に衝突するのがわかった。その力は扉の先も全て破壊の渦に包み込んだ。勇者達は巨人の放った攻撃の余波を受けていたが、ジンやムーは自身の周りに障壁魔法を張っていたためか、なんともなかった。


 光が治まると、そこには扉どころか、大地ごと無くなっており、その先の領域も全て消し飛ぶほどであった。領域の先の先を見ると、1つの大地が見えた。

「ひぇぇぇぇーーー。全部吹き飛ばしたのかよ!これじゃあ、奴も倒したんじゃあないのか?」

「それはないな。この程度で倒せるのであれば俺達は苦労をしていない。奴はあそこにいる」

 ジンは見えていた1つの大地を指さした。

「あそこかーーー。そういえば、試練はどうなったんだ?!」

「強き者が全てを葬り去ったんだ。問題はない。」

「・・・・・はぁはぁはぁ、そっか。で、あそこまでどうやっていくんだ」

「ムー、頼む」

「仕方ありませんね。本当に、この弱者を連れて行くのですか?足手まといですよ」

「なんだと、この野郎!もう一度言ってみろ!!」

「何度でも言ってやりますよ、この弱者が!!役立たずが!!」

「はぁん?!!!」

「落ち着け、コールも連れていく。目的を達成するには必要なことだ」

「そうですかそうですか。わかりましたよ」

 ムーが再び指を鳴らすと勇者達は姿を消していた。

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