第38話 正体

「おい・・・・・神ってどういうことだよ?!」

「そのままの意味だ。この世界を創った創造神。全ての生みの親。世界の支配者」

「それって・・・・・・」

 勇者と一緒に話を聞いていたレイナやティアも驚きを隠せないでいた。


「ちょっと待て!ということは、ジン達は呼び出したのは、あの女で・・・・・・、神ってことは、神は世界を滅ぼすつもりなのか?!」

「落ち着け、コール。答えを急ぐな」

「だってよ!!だったら、勇者は、勇者はいったい何のためにいるんだよ!!」

「・・・・・・勇者は10の世界の敵を倒し世界を救う。そのように伝承は伝わっていたな」

「・・・・・・ああ、そうだよな、ティア!」

「ええ、その通りです」

「その伝承は間違ってはいない」

「だったら何だよ!伝承を伝えた奴は、神と戦えってことを言いたかったのか?!」

「・・・・・・違うな」

「だったら、どういうことだよ?!」

「伝承を最初に伝えたのは・・・・・・・・・神だ」

「・・・・・・はぁ?!」

「・・・・・・勇者は10の世界の敵を倒し世界を救う。その物語を描くために、この世界は神に作られたんだ」

「はぁぁ?・・・・・・・なんだよ、それ・・・・・・なんだよ?!どういうことだよ、全然わかんねぇよ!なんだよ、物語を描くためって!なら、俺達は・・・・・」

「・・・・・・でも」

 ティアがジンと勇者の会話に入ってきた。


「それであれば、世界は最終的に救われるのですか?この世界は勇者が救うのですよね」

「・・・・・・それは少し違うな。この世界は既に勇者に救われた世界だ。10番目の敵、最後の敵を倒した後なのだからな」

「それでは・・・・・・・」

「神は・・・・・・・この世界に飽きたんだ」

「飽きたって・・・・・おい!飽きたらどうだって言うんだよ!!」

「神は、この世界に飽きた。故に世界を終わらせる」

「世界を・・・・・・終わらせる?世界中の人を殺すのか?!」

「近いが、少し違う。全てを無の核に戻すんだ。そして全てを無かったことにする」

「なかったことって!俺達が戦ったことも、必死訓練したことも、たくさんの人が傷ついたことも全部か?!全部なかったことにするのか?!」

「ああ、その通りだ」


「それは・・・・少し変ではないですか」

「何がだ?」

「もし、神が世界を終わらせるつもりであれば、なぜ今すぐ実行しないのですか?なぜ、わざわざジンやムーを呼びしたりしたのでしょう?」

「・・・・・とても、とても簡単な話だ」

「なんだよ?」

「このまま終わったらつまらない、と神が思ったからだ」

「はぁ???」

「神が思ったほど、この世界は面白くなかったようだな」

「面白くなかったって・・・・・おい、俺達は必死で・・・・・」

「ああ、その通りだ。俺達は必死で戦った。世界の敵と・・・・・・勇者と・・・・・・・」

 勇者は、もはや言葉を出すことも出来ないでいた。


「面白くなかったから、ジンやムーをもう一度、呼び出した。そして、世界を破滅の渦に包もうとした・・・・・・」

「ああ、その通りだ」

「神は・・・・・神は私達が苦しむことをお望みなのですか?」

「・・・・・・・神からすれば、面白ければなんでも良いのだろう」

「・・・・・・・まるで悪魔ね」

「ムーの言い分ではないが、呼び名など記号でしかない。中身を見極めなければ真実は見えてこないものだ」



「なぁ」

「なんだ?」

「ジンは神に操られていたのか?」

「正確な表現ではないが、おおよそ、その認識で正しい」

「他の奴もか?」

「少なくとも、6から9番目までは同様だな。神に抵抗していた者達だ」

「なら、他の奴は進んで世界を滅ぼすことに協力したのかよ!?神が楽しむだけの世界のために?!!」

「・・・・・色々、事情があるのだ」

「そうかよ・・・・・で、これからどうするだ?」

「神と戦う・・・・・・・そうしなければ、この世界が終わってしまうからな」

「戦うって、相手は神なんだろ?」

「ああ」

「勝てるのかよ?」

「・・・・・・・・・・・・」

「そうだろうな、もし勝てるのなら、そんな顔をしないだろうな」

「勝たなければ・・・・・・」

「は?」

「勝たなければ世界が終わってしまう。大事な、大事な俺達の世界が・・・・」

 ジンはレイナの肩を自分に寄せ頭を撫でた。そして、決意を固めたように言った。


「勝つ方法はある。その準備もしてきた」

「・・・・・・そうか、わかった!俺も付き合うぜ!」

「ありがとう!コール!!」

「私も手伝う!!!」

「私も及ばずながら手伝わせていただきます」

「ああ、頼む」


「ふぁっふぁっふぁ、どうやら話はまとまった様ですね」

 処置が完了したためか、ムーが勇者達のもとに帰ってきた。巨人は先程までと同じ位置にいたが、捕縛の魔法は解かれているようであった。また、ムーと一緒に1人の青年が来た。


「ムーは良いとして、こっちのやつは誰だ?」

「コール、よく見るんだ。その青年は、リオだ」

「リオって!ええええぇぇぇぇぇ!!」

 リオは恥ずかしそうに顔を逸らした。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る