第37話 解放
「ふぁっふぁっふぁ!それでは、この者を解放しましょう」
老人が倒れたまま動けいないジンの体に触れると、ジンは苦しみだした。
「や、やめろ!!頭が!!!体が!!!がぁぁぁぁぁ!!!!」」
「ジン!」
「おい、大丈夫なのかよ?!」
勇者達は心配そうに見つめていたが、老人は変わらずジンに触れ続け、そしてジンは苦しみ続けた。そして、ジンの中から何かが抜けていくようであった。
「これで完了です」
「・・・・・・・・・・・ああ、そうだな。助かったよ」
老人はジンの捕縛を解いた。ジンはゆっくりと立ち上がり勇者達と向きあった。
「ジン、お前、もとに、正気に戻ったのか?」
「ああ、ただいま。コール」
ジンは真正面から勇者と向かい合い、目を見て問いかけに応じた。
「ジン!!!!!」
レイナは涙を流しながらジン抱き着いた。
「ジン、ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!」
「いいだな、レイナ。あれは仕方がなかったことなんだから」
「でも・・・・・・・」
ジンとレイナはお互いの体温が同じくなるほど抱きしめ合った。
「まったくよーー!お前ってやつは、どんだけ俺らが苦労したと思っているんだ!」
勇者も半泣きの状態でジンに近づいていった。
「ああ、すまない。本当に迷惑をかけた」
「ほんとだぜ・・・・・・この大馬鹿野郎が!」
「ジン、貴方は世界の敵ではないのですか?」
ティアは半信半疑ながらジンに近づいていた。
「・・・・・・少なくとも、さっきまでの俺は世界の敵だった。しかし、その役目からは解放された」
「・・・・・・・よくわかりませんが、敵ではなくなったということは理解しました」
「すみないな、ティアにも迷惑をかけた」
「・・・・・・もう済んだこと、と簡単に言うことはできません。しかし、これからの貴方次第だと思います」
「・・・・・そうだな」
「もうわけわかんねぇよな、ちゃんと説明しろよな!ジン!!」
「そうしたいところだが、まだやることが残っている」
「ふぁっふぁっふぁ!その通りです!」
ジンと老人は目で会話でもしているのかと思う程、互いの目を見ていた。
「ジン、こいつのことをしっているのか?会ったことはないと思っていたが」
「よく知っている、と言って問題ない。ただ、世界の敵であった時の事はしらないがな」
「ふぁっふぁっふぁ!お互い様ですな!」
「ジン、貴方達はいったい・・・・」
「・・・・・・・”賢き者”よ、他の者はどうしている?」
「姫様の御指示で動きを止めている」
「そうか、ではその者達も解放しよう!」
「・・・・・・なぜ、お前の言うことを聞かなければならない?」
「・・・・・・・・・・・はぁー。ティア、すまないが、こいつにあの巨人やリオを解放するように、お願いしてくれないか?」
「ええ、構わないけど。・・・・・・・巨人とリオをジンと同じく解放してもらえないかしら」
「かしこまりました!」
老人は膝をつき、満面の笑みで答えた。
「・・・・あと、もう一つ、貴方の名前を教えてください」
「ふぁっふぁっふぁ!名前などただの記号です。しかし、そうですなーー。可能であれば”ムー”とお呼びください」
「わかったわ、ムーですね」
「ふぁっふぁっふぁ!ありがたき幸せ!では参りましょうか」
「って、おい!全然よくわかんねぇよ!少しは説明しろ!!」
勇者の問いかけにムーは無視しており、代わりにジンが答えた。
「少なくとも、俺やムーはコール達の味方であり、あの女の敵だ」
「あの女って、ジンを呼び出したやつか?」
「ああ、そうだ。そして、俺やムーはあの女に心を縛られていた。そして、あそこにいるリオや巨人も同じだ」
「ってことは、とりあえず、あの巨人やリオを味方にするってことだな?!」
「そのとおりだ」
「わかったぜ!それなら問題ない!」
「・・・・・・それでいいのか?」
「ああ、聞いてもよくわからない気がしてきた。それに!」
「ん?」
「ジンが一緒なら怖いもの無しだぜ!」
「・・・・そうか」
ジンは軽く笑みを浮かべた
「姫様、確認ですが、この者らも連れて行くのですね」
「ええ、お願いします」
「・・・・・・仕方ありませんね」
勇者やジンはやれやれといった感じで顔を見合った。
「ふぁっふぁっふぁ!それでは移動しますよ!」
ムーが指を鳴らした。
勇者達は巨人のすぐ近くに移動していた。
「それでは姫様、私は奴らを解放してきますので、少しお待ちください」
「わかったわ」
「おい、そこの英雄、姫様をしっかりお守りするのだぞ!」
「ああ、わかっている。ちなみに、俺の名はジンだ」
「どうでもよいわ、そんなこと!」
ムーは再び指を鳴らすと、その場から消え去っていた。勇者はジンが見ているところと同じところ見ると、そこにはムーがいた。そして近くにはリオの姿も見られた。
ムーは先程、ジンに施したようにリオや巨人に触れていた。
「・・・・・・リオも生きているんだな」
「ああ、その通りだ」
「・・・・・・なんで、お前らは生きているんだ?」
「なんで、か・・・・・・・・」
遠目に見えるリオや巨人からは何かが抜けていっているようであった。
「あの女が俺達を復活させたから、かな」
「・・・・・・あの女は敵なんだよ」
「・・・・・・少なくとも俺はそう思っている」
「いったい何者なんだ?」
「あの女は・・・・・神だ」
「え?」
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