第2章 ある世界の終焉
第34話 再戦
「なんで・・・・・なんで生きているんだよ!ジン!!」
一緒にいたレイナやティアは驚きのあまり声が出ない状態であった。
「・・・・・・・・・・」
「なんとか言えよ!ジン!!」
ジンは勇者の問いかけを無視して、突然現れた女性に向かって提案をした。
「・・・・・・・ここで戦闘になれば私の圧勝ですが、良いのですか?」
「んーーーーー、そうね!じゃあ、貴方達は移動して貰いまーーーす!パチンっとな!」
勇者とジンは消えてしまった。
「コール?!」
「な!陛下をどこに連れ去ったのですか?!」
「ちょっと離れた場所だよーーーーー!ほらほら、貴方達も早く準備しないとあいつらが着ちゃうよーー!」
「何を言っているのですか?!」
「じゃあ、私はこれで!まっーーたね!」
女性は言葉と共に空間の歪みの中に消えていった。
「待ちなさい!!」
「き、消えた・・・・・」
「っく! すぐに陛下を探しましょう!」
「う、うん!」
ティア達が勇者を探しに行こうとすると、門の方から伝令がやってきた。伝令は街の城門の外に突如巨人が出現したことを伝える内容であった。しかも、その巨人は8番目の敵と酷似しているとの報告であり、ティア達を絶望の淵に落とし込んだ。
勇者とジンはある場所に飛ばされていた。
「ここは・・・・・」
「覚えがあるだろう、8番目の敵を倒した峡谷だ」
勇者とジンは峡谷の頂上に飛ばされ、そこからは街を見ることができた。そして、街に近づいている巨人も確認することができた。
「あいつは!!」
「ああ、私と同じように他の者も・・・・・・」
「食い止めないと街が!!」
勇者は急いで街に向かおうとしたが、行く手を遮りようにジンが剣を抜き、立ちはだかった。
「・・・・・・なんのつもりだ!」
「何をいまさら、私は世界の敵だ。そして、お前は勇者だ。ここで私がお前を倒すのは自然な流れであると思うが」
「おい!ふざけんなよ!街にはレイナやティア、住民だっているんだぞ!」
「ああ・・・・私が殺し損ねたティアや住民が・・・・・そして、私を殺したレイナがいるな」
「っく!馬鹿は死んでも治らねってことか!!」
勇者は剣を抜き、ジンと相対した。
「それでいい。さぁ、あの時に果たせなかった、再戦といこう」
勇者とジンとの再戦が幕を開けたのである。
ティアとレイナは街の城壁に到着し、城壁の上から外の様子を確かめた。城壁からは街にゆっくりと近づいて来る巨人が確認できた。確かに8番目の敵と酷似していた。
「すぐに迎撃の準備を!兵士や魔法士を集めてください!また、住民を城まで非難させてください!」
ティアは指示を次々に飛ばしたが、防衛は絶望的だった。嘗ての戦いでは多くの仲間や兵士達と迎撃したが、今やほとんどの仲間や兵士は失われ、戦いの要である勇者も行方不明であった。
しかし、ティアは諦めるわけにはいかなかった。自分の命は親友に託されたものであり、守るべき住民も残されていたのだから。
指示を飛ばしている最中にティア達の近くの空間が歪み始めた。
「え?!」
空間からは、7番目の敵の際に倒した老人が現れたのである。
「ほっほっほ!久しいですな」
「貴方は!なぜ生きているのですか?!」
「ほっほっほ!8番目や9番目は既に見たのでしょ?であれば不思議なことではないと思いますが?!」
「こんなときに!」
「貴方様は私と戦ってもらいますよ!」
「な、なにをするのですか!!」
「ティア!!」
老人とティアの周辺の空間が歪みだした。レイナがティアの手を掴もうとしたが、間に合わず老人と共に消えてしまった。
「ティア!どこいったの!!ティア!!」
レイナは叫んだが返事は返ってこなかった。全体の指揮をしていたティアが消えたため兵士達も動揺が激しくなり、潰走も時間の問題と思われた。レイナ自身も逃げ出したい気持ちでいっぱいであったが、勇者やティアを置いていくことは出来ず、ここは自分が頑張るしかないと考えた。
「指揮権は私が引き継ぎます!皆さん、先ほどまでの指示の通りに動いてください!私達の後ろには生き残った大切な命があります!多くの人が必死に戦い繋いだ命があります!負けることは絶対できません!共に、共に戦い抜きましょう!!」
レイナの声によって空気が変わった。兵士達は心はぎりぎりのところで踏みとどまり、巨人の迎撃のための準備進められた。
「ここは?!」
「覚えておいででしょう、ここは貴方様達に倒された場所です」
ティアと老人は城の屋上に移動していた。
「私を孤立させるために?!」
「ええ、まぁどこでも良かったのですが、ここからなら街が破壊される様子が見やすいですからね!」
「悪趣味な!」
「ほっほっほ!では、我々も先の戦いの再戦といきますか!!」
「私はあの時とは違う!簡単に倒せると思わないでいただきたい!」
「そのようですね。しかし、それは私も同様です!さぁ、終焉の曲をともに奏でましょう!!」
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