第23話 急転

 勇者達はリナに会うために、ラビリアス家を訪問していた。既にラビリアス家にはルージュやクルルの他にラーラ王女やソーラ、ティアが訪ねていた。勇者達も含め、9人で仲良く談笑を繰り返した。

「じゃあ、勇者様達3人は昔から一緒なんですね」

「そうだよ、ジンとレイナは昔からの友達で一緒に色んな事をしてきたんだ」

「その点なら、私とルージュとリナとクルルも同じですわ。昔はよく4人で遊んでいましたわ」

「姫の遊びは、城を抜け出すとか、大臣の椅子に虫を置いておくとかの悪戯ばかりで、みんなで手を焼いていましたけどね」

「ルージュ!そ、そんなに酷くなかったと思いますわ」

「ふふふぅ、ラーラ様は昔から凄かったですものね」

「リナまでーーー」

「そんなお転婆なラーラ様も見てみたかったですね」

「勇者様ーーー、私はもう少しお淑やかであったと思いますわよ」

「まぁ、お転婆の酷さでいけば、コールには勝てないだろうな」

「ば、馬鹿!何言ってんだよ!俺は手のかからない子供だったと思うぞ」

「やれやれ、どの口が言っているんだか。一緒にいればやんちゃして怒られ、一緒にいないとコールだけ怒られて、むしろ小さい時は怒られていないところ見る方が珍しかったな」

「ふふふぅ、勇者様も昔は凄かったのですね」

「リナちゃん、そんなことはないからね!ジンが誇張して話しているだけだから」

「そんなことはないと思うなーーー」

「レイナまで!」

 ただただ他愛のない話を繰り返す時間だけが過ぎていった。


「そうだ!皆さんにお渡ししたい物がありました。少しこちらでお待ちください」

「どこかへ取りに行くのか?それなら俺が取ってくるが」

「大丈夫です、お兄様は皆さんとここにいてください」

「しかし・・・・・」

「大丈夫です!ここは私達の家ですよ。問題ありません」

 リナは自走できる椅子を使い部屋を出ていった。


「心配だな、お・兄・さ・ま!」

「ちゃかすな、勇者!」

「過保護だねーーー。流石に家の中を動くのに大きな問題はないんだろ」

「ああ、大体のことは一人でやれるようになった。いや、一人でやっているという方が正しいか」

「やはり、目や足を治すことはできないのでしょか」

「今のところは何も手は見つかっていない。いや、何処も悪くないはずなんだ」

「どういうことだ?」

「リナの体を調べても何処も異常はなく健康なんだ。本来であれば目も見えるし、自分の足で歩けるはずなんだ!」

「現状はルージュでも原因を見つけられておりません。僕も力になりたいのですが、良い方法は無く苦心しております」

「・・・・そっか、なら今日はいっぱいお話して楽しんでもらわないとな!もしかしたらそれで治るかもしれないし!」

「・・・・まったく、そんなので良くなったら苦労はしない。だが・・・・ありがとう」


『どうやら、そんな時間は無くなったようだ』

(う、動けない・・・・声も出ない・・・何が・・・)

 勇者は妙な声を聴いた直後から身動きができなくなった。それは周りも同様の様子であった。しかし、1人だけは動けるようであった。その者は立ち上がり、持っていた短剣を抜き、そしてラーラ王女に突き刺した。その者は勇者のよく知る者であった。

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