第22話 嵐の前
勇者が8番目の敵を倒したことで街は大いに盛り上がり、祝いの祭りが開かれていた。王様から祝いの品と報奨金が授与され、城でも宴が開催された。それは、今までに開催された中でも最大規模であり、皆の盛り上がりは数段高いものであった。
「ふぅぅーーー」
「また、おさぼりか」
「そう言うなって。ジンは良いよ、適当に宴会を楽しめるからーー。俺はいろんな人から質問攻めだぜ、やれ巨人はどうだったのだの、やれ巨人の中はどうだったのだの、みんな似たような質問ばかりで疲れてしまったよ」
「そうだろうな。しかし、気になるのだろう。何しろ今回は目に見えて、どうしようもない敵であったし、関わった人も桁違いだ。流石に軍隊で歯が立たないのはやばかったな」
「まぁ、ほんとに討伐できてよかったよ。そうじゃなかったら今頃どうなっていたか」
「ほんとにな、流石にコールが巨人に飲み込まれた時は肝を冷やしたぞ」
「俺もあれはやばいと思ったよ。助かったのも運が良かっただけだからな」
「しかし・・・・ソーラのために飛び込むとは、実はソーラに気があるのか?」
「ち、ちげぇよ!そんなんじゃない・・・・・ただ体が勝手に動いただけだ」
「・・・・・そうか。しかし、8番目の敵も倒した。あと少しだな」
「ああ、あと2体だ。やっとここまで来た。もうすぐ、もうすぐ世界を救うことができる。誰も傷つく必要がない世界が・・・・・」
「ああ、もうすぐだ。そういえば、ルージュから頼まれたんだが、今度またリナちゃんのもとに遊びに来て欲しいと言っていたな」
「ああ、そっか。リオの・・・・・・・・以来行ってなかったな」
「リナちゃんには、リオは記憶が戻り親御さんが迎えにきて、急遽実家に帰ったことになっている」
「・・・・・・そっか。その方がいい、リナちゃんまで傷つけることはない。しかし、ルージュのやろう直接俺に頼めばいいのに、わざわざジンを通すとは、素直じゃないな」
「仕方ないさ。じゃあ、予定の方は俺の方で組んでおく。さて、そろそろ主役が戻らないと騒ぎになるぞ」
「はぁ、わかったよ。もうひと頑張りしますか」
「その意気だ」
勇者達が宴に戻ると王女であるラーラが勇者のもとを来た。
「勇者様、この度も大活躍であったようですね」
「これはラーラ様。ラーラ様にそう言ってもらえると頑張った甲斐がありますよ。流石に今回は大変でした」
「それはそれは、お疲れ様でした。この国の平和が維持できているのも、勇者様の尽力によるものです。どうぞ、これからもよろしくお願いします」
「もちろんですよ。残りの敵も俺がばっちり倒してみせます」
「それは心強いですわ」
「はっはっは!任せてください!」
「確かに、それは心強い限りだ」
「げぇ、ルージュ。いたのかよ」
「当たり前だ、姫様がいる場所が本来の俺の居場所だ。しかし・・・・・あの弱かった勇者からそのような言葉を聞けるとは。人とは変わるものだな」
「うるせぇ。あ、そういえばジンから聞いたぞ。リナちゃんが俺達に会いたがっているらしいな。まったく、直接頼みにくればいいものを」
「別に、お前が目的じゃあないからな。この前来た時にレイナとジンがリナに良くしてくれたからな。だから、リナが会いたいのは勇者じゃない!」
「な、言ってくれるなーー」
「まぁまぁ、ルージュも少しは素直になりなよ。勇者様、リナは皆さんに会いたいとおっしゃっていました。なので是非訪ねてあげてください」
「クルルが言うなら、仕方ないな!」
「あらあら、面白い話を聞きました。勇者様、リナと会ったことがあるのですか?」
「ええ、以前にルージュの家を訪ねて一緒に遊びました。とても良い子ですよね」
「ええ、とても良い子よ。そうだ、私も久しぶりリナに会いたいわ。ルージュ、日程が決まりましたら私にも教えなさい」
「しかし、姫。以前の事件以降、王から外出を禁じられているではないですか」
「ええ、でもルージュの家ですし。それに、ルージュ達の他に勇者様もいるのであれば、この国中で一番安全ではないですか」
「・・・・・はぁ、わかりました。王に相談してみます」
「いつもありがとう」
後日、ラビリアス家に訪ねる日が決まり、王女ラーラと共にリナを訪ねることになった。
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