第15話 訪問

 勇者達はルージュの妹に会うため、ラビリアス家を訪問していた。勇者達はルージュに迎えられ部屋まで案内された。部屋の中には既にルージュの妹らしき者が変わった椅子に座って待っていた。


「リナ、勇者がお見えになったぞ」

「初めまして、勇者様。リナ・ラビリアスと申します。勇者様達のことはお兄様にいつも伺っております」

「ご丁寧にありがとうございます。勇者のコールと申します。ほら、リオも挨拶をするんだ」

「リ、リオと申します。勇者様達のお手伝いをさせていただいております」

 お互いに簡単な挨拶の後に椅子に座り、勇者のこれまでの活躍?などが話された。一緒に参加したリオは初めは緊張していたが、心優しいリナの心配りにより少しずつ打ち解けていった。リナとリオが話している横で、小声で勇者とルージュが話していた。


「リナはとても良い子じゃないか。とてもルージュの妹とは思えない」

「余計なお世話だ。・・・・・リナは良い子だ、良い子過ぎる」

「はぁ?何が不満なんだよ?」

「リナは自身の境遇のせいで、友達と呼べる者がいないんだ。しかも、リナは自分が生きることが周りの負担になっていると考えているためか、全く我儘を言わないんだ」

「確かに目も足も悪いとなると、なかなか生きるのは難しいわな」

「それでも、それでも俺はリナに生きて欲しい・・・・幸せに生きてい欲しいと思っている」

「ルージュが魔法大学に通っているのも、妹を治す方法がないか探すためだからね」

 隣に座っていたクルルが教えてくれた。リオとリナにジンとレイナが加わり下町の動物や生き物の話で盛り上がっている様子であった。その様子をルージュは優しい目で見守っていた。おそらくは望んでいた光景が目の前に広がっていたのだろう。


「ふふぅ、そのような生き物が本当にいるのですか?」

「本当だよ!こう、飛んだり跳ねたっ!うぅ!」

「? どうかなされましたか?」

 リオは突然胸を押さえ始めた。心配した周りも近寄ったが、すぐに立ち直りリオは問題ないことを周りに伝えた。

「大丈夫です」

「そうですか、体は大事になさってください」

 特に大事ない様子であったため、そのまま集会は続いた。リナにとっては初めての経験だったからなのか、少し体調が悪くなり始めたため、夕食の予定は無しとなり、勇者達は帰宅することになった。リナ自身は問題ないと伝えたものの、周りが説得すると特に反論も無く、集会は終わりを迎えた。

 

 勇者達が帰宅した後に、リナはベットに入り今日は休むことになった。リナが眠るまでルージュがそばにいる、それがリナが願った数少ない我儘であった。

「今日は楽しかったかい?」

「はい、とても!でも、興奮しすぎて体調が悪くなったのは、皆さまに申し訳なかったです」

「それは仕方がないことだ。皆もわかっているさ」

「また来てくださるでしょうか?」

「ああ、きっと来るさ。だから今日はもうおやすみ」

「はい、おやすみなさい、お兄様」

 リナはゆっくり目を閉じ眠りについた。



 勇者達は帰宅の最中に今日のことを思い出していた。

「リオ、今日は楽しかったか?」

「はい、勇者様。とても楽しかったです。リナ様もお優しくて」

「なかなかお似合いだったな、話に入るのが気が引けたよ」

「ジン様ーーーー。でも本当に楽しかったです。今回もそうですが、今までも楽しいことばかりです。僕は勇者様に出会えて本当に幸運でした。」

「//////そうか、それはよかった」

「あ、でもリオとリナが結婚したら、コールはルージュをお兄さんと呼ぶのかな?」

「ああ?なんでそうなるんだ?」

「ほら、リオはコールの弟なわけじゃん。そうなると、リオとリナが結婚したら必然的にコールとルージュが兄弟になるわけで」

「なんでそうなる!リオとリナちゃんが結婚するのは良いが、俺とあいつは兄弟にはならん」

「・・・・・やっぱり、勇者様は僕が弟というのは嫌ですよね」

「そ、そんなことはない!そんなことはないぞ、リオ!」

「なら、やっぱりルージュと兄弟になるしかないな。」

「おい!ジンいい加減にしろよ!」

「はっはっはっ」

 ジンにつられるように勇者達は笑い出し帰宅した。今日のような日がずっと続けばいい、勇者はそう思っていた。しかし、その願いはすぐに打ち砕かれてしまった。


 勇者達は帰宅して夕食を取っていると、再びリオが苦しみ始めた。今回はすぐに治まらず、急いでベットに寝かせ原因を探ろとしたその瞬間、リオの胸が光り出した。そこには、世界の敵である紋章が浮かび上がっていた。

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