第8話 気分転換

 勇者達の訓練は続いていたが、屋敷の中のみで過ごす姿を見かねた貴族が気分転換の外出を進めてきた。会食での毒殺の頃から屋敷内で過ごすことが増えていたが、きっかけは魔法大学での事件である。あの事件からは力を付けるまでは不要不急の外出は控えることしていたため、以降で外出したことが無かった。勇者の魔法訓練も行き詰まりを感じており、ここで気分転換を実施することはルージュ達も賛成した。


「いやーー。久しぶりの商店街だな。」

「そうだね!あ、コール!美味しそうな食べ物が売っている!!あれ食べよーー?」

 勇者は一緒に来たレイナに引っ張られながら商店街を進んでいく。他に来たのソーラとティアである。そう!勇者以外は全員が女性であった。ジンは行っておきたい場所があるとのことで別行動であり、ルージュとクルルは貴族の仕事があるとかで不参加となった。そのため今日の護衛はソーラとティアが担当しており、勇者の両脇を固める形で進んでいた。護衛とはいえ今日は普段あまり見られない私服であり、動きやすい恰好重視であるものの、2人の美しさを隠しきれる物ではなかった。そのため、傍目に非常に羨ましい光景が広がっており、すれ違う者からは奇異な目で見られていた。


「ソーラやティアは下町の商店街とか来たりするのか?」

「ほとんど来たことがないわ。馬車で通り過ぎる際に見る程度よ」

「私もほとんど来たことがありません。必要な物は取り寄せるか、専門のお店が貴族街にもありますから」

「なら今日はばっちり案内するぜ!王様からもお金を貰っていたけど、特に使い道がなかったから十分に残っている!」

「そのお金は・・・・世界の敵を打倒するために、与えられたものじゃあなかったかしら。余計な事に使っていると罰があたるわよ」

「固いこと言うなって、今日は楽しもうぜ!」


 勇者達は商店街を進んでいき様々な露天や店舗を訪ねた。レイナは道々にある出店の食べ物に次々に惹かれていき、どこに入るのかと思うレベルで食べ歩いて行った。ティアは可愛い小物が売っている店で商品に目が奪われてしまい、周りが肩を揺らすまで意識が戻らないほどであった。ソーラは髪留めに目が気になっている様子であった。


「なんだ?欲しい物でもあったのか?」

「・・・・・そんなことは無いわ。さぁ、行きましょう」

「おっちゃん、これをくれ。・・・・はい、どうぞ」

「なによ?!欲しいなんて言っていないじゃない!」

「素直じゃないなーー。いつも守ってくれているお礼だよ」

「・・・・・そいうことなら、貰っておくわ・・・・あぃ」

「コール!あっちにも美味しそうなものがあるから行ってみよう!」

「全くあいつは、どれだけ食べる気だ。今行くーー!ソーラ?何か言ったか?」

「なんでも無いわ。さっさと行くわよ!」

「ん?そうか」




 

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