第7話 ひと時の休憩
勇者達3人はルージュやクルル達の元でさらなる訓練に励んでいた。国随一と言われる2人の指導は的確であり、勇者達も順調に成長を続けていた。勇者とジンは剣技、レイナは槍技の技を身に付け、国の正規兵レベルになるまでになっていた。また、魔法に関しては、ジンは放出系および身体向上系の両魔法を身に付け、その技量は国の魔法士団に所属できるまで向上していた。レイナは身体向上系の魔法を得意しており、上位のレベルの魔法まで身に付けていた。レイナは身体向上系の魔法を駆使することで正規兵の中でも上位に位置できる力を保有している。
そして・・・・勇者に関してであるが。
「がぁぁぁ!!!!!!」
「叫んでも水を発生させることは出来ないぞ。むしろ核の拡散に繋がるかもしれない。・・・・・・心意気は認めるがな」
「はぁぁぁぁ・・・・・・なんで出来ないんだ」
勇者は最初のレベルである水の生成を、未だに成功させることが出来ていない。純粋な身体能力に関しては日々の訓練により十分な体作りが出来ているが、魔法の取得に関しては難航している。
ルージュは勇者の背中に触れ、無の核の状態を確認していた。
「やはり、体の中には十分な核が存在している。量自体は魔法士団でも上位に入るレベルだと思うが、なぜそれを放出できないんだ!」
「知るか!!クソっ・・・・・・ジンもレイナも出来ているのなんで俺には出来ないんだ。俺は勇者だぞ!はぁぁぁ・・・」
「十分な核の量を持っており、自身の体内でも核をコントロールできる。しかし・・・・・・・放出が上手くできないとは、珍しいやつものいたものだ。」
勇者とルージュは芝生に腰を下ろし、離れたところで訓練しているジンやレイナ達を眺めていた。
「なぁ、俺もレイナのように身体向上系が得意、ということで次のステップに進むことはやっぱりできないのか?」
「・・・・・・無理だな。水を生成することは基礎中の基礎だ。水は無の核を最小の変化で生成させることができる。そして、同様に様々な物を生成し放出することで、無の核を変化させることを体に覚えさせるんだ」
「何度も聞いたよ!色々な物を生成できるようになった上で身体を向上させる物を作り、体の中に放出する。それによって身体能力を向上させる」
「そうだ。そのため、身体向上系の魔法は非常に危険の伴うものだ。誤ったものを体内に生成してしまった場合、無効であれば良いが、体を傷つけるものであった場合は目も当てられない。しかも、その魔法は戦闘中という非常に集中が難しい環境で必要とされるため、無意識化で魔法が使えるレベルまでならなければ意味がない」
「水すらまともに生成できない俺が、下手に使えば死ぬかもしれない・・・・・」
「ああ、故に正規兵の中でも身体向上系の魔法を使用できる者はわずかだ。魔法士団の中でも多くは無い。みんな自分の魔法で死にたくは無いからな」
そのように評した中で目前には、その身体向上系の魔法を使用しながら模擬戦を繰り返しているジンとレイナが広がっていた。
「やっぱり、あの2人は優秀なのか?」
「平均以上ではあるだろう。それ以上に彼らには覚悟がある」
「覚悟?」
「ああ。おそらくだが、あの2人は悔いているのだろう」
「何をだ?特にあの2人に不幸な過去はなかったと思うが」
「・・・・・・あの2人は目の前で3回も見たくない景色を見ている。後ろから斬られ、毒殺されそうになり、魔法によってボロボロになる勇者の姿を」
「・・・・・・・・・」
「だからだろう。時々鬼気迫る姿を目にする。愛されているのだな」
「馬鹿なこと言ってじゃね・・・ただの幼馴染だ」
勇者は目を逸らすように横向きに体を捻った。
「さて、続きをやろうか!」
「そうだな。出来ないと決まったわけではないしな!」
「その意気だ!」
勇者は今日も水作りの練習に励んでいた。
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