第6話 新しい仲間

 勇者の怪我の療養中に4人の訪問者があった。2人は先の戦いで勇者を救ったルージュとクルルであったが、残りの2人は勇者と同じくらいの女性であった。

「お久しぶりです。勇者様が息災なようで安心いたしました。これらならすぐにでも世界の敵を倒しに行けますね」

「息災なものか!やっとまともに動けるようになったばかりだよ!」

「コール・・・・先日助けていただいたんだ。しっかりお礼を言うべきところだろ」

「うぅ・・・この前は助かった。お前たちのおかけでジンとレイナも無事だったし、本当にありがと」

「いえいえ、国民を守るのは騎士の役目です!当然のことをしたまで、なのでお礼は不要です」

「まぁー。勇者が守られるというの、見ものでしたね」

 ルージュは相変わらずの軽口であったが、勇者達のお礼も届いているのか少しの照れ隠しのようにも見えた。

「それで、本日はどのようなご用件ですか?ルージュ様やクルル様がわざわざ訪ねてくるということは、よほどの事態とお見受けしますが」

「先ほどの話しとも繋がるが、勇者に正式に護衛を付けることになった」

「ぐぅっ!俺に護衛・・・・やっぱり弱いから?」

「相変わらず水の生成に苦戦しているぐらいだ、当然といえば当然か」

「うるせぇ。あとちょっとで出来る気がするんだよ!」

 勇者とジンとのやり取りに、軽い笑みを浮かべたルージュは話を続けた。


「未だ勇者としての力を解放できていない様子。そのため護衛を付けるという話が評議会でまとまったんだ。今までは国の中枢で過ごしているために問題ないと判断されていたが、会食での毒殺や大学での暗殺を考えれば、どこも安心とは言えない状況だからな」

「そういえば、気になってたんだが、一つ聞いてもいいか?」

「なんだ?」

「世界の敵には紋章が付いているのだろ?全員を身体検査をすれば発見できるんじゃないか?」

「それは既に実施している。先の毒殺者も暗殺者も当然身体検査された人たちだったが。どうやら紋章自体は、事が発生したときに発現するものらしい。残念ながら事前に世界の敵を見つけるのは難しい」

「拷問とかで仲間の情報とかを吐かせることはできないのかよ?」

「2番目の毒殺者の際に様々なことを試したが、吐かなかった。というか全く知らない様子であった。ただ、『勇者を殺す!』という言葉を言い続けるだけであったな」

「そんな状況のため勇者様に護衛を付けることになりました。護衛は我々で実施いたします」

「我々って、そっちの2人もかよ」

「2人とも非常に優秀な人物です。護衛するにあたって能力の問題は全くありません」

クルルに促されるように2人は席を立ち、それぞれ自己紹介を始めた。

「ソーラ・キルヒライドよ。よろしくね!主に付与魔法が得意よ」

「ティア・グラベールです。よろしくお願いいたします。主に回復魔法を専門にしております。近接戦闘も問題ありません」

 ソーラは薄茶色の髪をツインテールに縛っており、活発そうな印象を受けるが、レイナよりも大人びているように見える。ティアは茶色に少し赤みを帯びた髪をストレートに腰程度まで伸ばしており、寡黙な美少女を思わせる雰囲気を纏っていた。


「我々4人が交代で勇者様を護衛いたします。あと貴族様もお忙しい様子のため、勇者様達の訓練も我々が担当いたします。」

「うへぇ。女にも守られるのかよ・・・・可愛いからいいけど」

「仕方ないな。これもコールが弱いのが悪い」

 勇者は今後の生活に期待を膨らませながらも、自らの弱さを立場を再認識することになった。

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