第3話 2番目の敵

 貴族の元で教育を受けることになった勇者とその仲間たちは、最初に作法や礼節などの教養から学び始めた。これは、直近で国王や各国の外交官と謁見があるためである。釈然としない勇者であったが、貴族の館での暮らしは故郷では考えられない食事や設備に満足していたため、特に不満は述べずに過ごしていた。

 国王との謁見では、国の未来は勇者の双肩に掛かっていること、世界の敵を打倒するために協力は惜しまないことが王から伝えられた。当面の資金や様々な武具や道具が与えられ、勇者としての自覚を持たざるを得ない状況であったが、勇者はそれ以上に気になっていることがあった。


 謁見が終わった勇者は、帰りの廊下でジンと会見の内容を話していた。

「王女様、美しかったな。あんな人をお嫁に貰いたいぜ」

「またお前は・・・。よくそんなことを口にできるな」

「だって、あんなに美しいんだぜ。勇者として世界を救ったら結婚してくるかな?」

「あまり物騒なことを言うなよ。国王の1人娘と結婚するということは国王になる、と言ってるの同じだぞ!しかも、王女には既に2人の貴族の婚約者候補がいるらしいから、そいつらから不興を買うぞ。」

「詳しいな!お前も狙ってたのか?」

「はぁ・・・・・教育であっただろ。寝てたかもしれんが」

「だって、教育って言っても作法とか貴族社会の常識とか、そんなのばっかりで。戦う訓練も基礎体力作りでつまらないだもん」

「仕方ないだろ。俺たちは基礎がボロボロで剣もまともに振ることさえできないからな」

「とりあえず、今日はこの後は国王との会食だから楽でいいぜ。帰ってから、また基礎訓練だったら嫌になっちまう」


 勇者達は会食の時間になると、会場に入場し各々の席についた。国王からの簡単な挨拶の後に続々と食事が運ばれてきた。

「わぁー、美味しそう!」

 一緒に来たレイナは涎を垂らしそうになりながら料理を見ていた。

「確かに旨そうだな!では早速食べてみますかな」

「あれ?コールの料理は少し違うの?私のと匂いが違う気がする」

「!!。コール!今食べたものをすぐに吐き出せ!」

「え?!」

 その瞬間に勇者の目の前は真っ暗となり、仲間たちが騒いでいる声が聞こえているが、徐々にそれも遠のいていった。



 勇者は猛烈な気持ち悪さに襲われ目が覚めた。

「がはぁ!うぅぅ気持ち悪る。ここは?」

「コール?!大丈夫?!」

「目が覚めたか?」

 勇者はベットの上に寝かされており、近くにはジンとレイナがいた。


「あああ?なんか前にもこんなことがあったな」

「そうだな。なんとか無事そうでよかった。ここは王城の客間だ」

「そうか・・・・いったい俺はどうしたんだ?」

「料理に毒が盛られていて、それを食べて気絶したんだ。大変だったぞ!気絶したお前から料理を吐かせるのは」

「でもよかったぁ。コールが無事で。心配したよぉ!」

「それは面倒をかけたみたいだな。そうだ!俺に毒を盛った奴は見つかったのか?」

「ああ、それはレイナが見つけた」

「ええへ。凄いでしょう」

「それは凄いな!どうやって見つけたんだ」

「匂いで」

「匂い?」

「うん、コールの料理と同じ匂いがする人がいたんだけど。その人を調べてもらったら、紋章が見つかったんだ」

「紋章って。ええええ!世界の敵の?」

「そう。それで取り押さえられて、尋問の後に死刑になったみたい」

「やったな。これで2番目の世界の敵を倒したぞ」

「ああ、それはよかったって!俺の活躍は?! 2回連続で気絶していたら世界の敵が倒されていたんだけど?!」

「そうだな・・・・」

「勇者・・・・・いらなくない?」

 勇者と仲間たちは苦笑いをするしかなかった。



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